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FFコレクション5をゲット

予定どおりに

 

リモートNOVA『FFコレクション5を昨日ゲットしたぜ』

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アスト「おお、ついに来たか。今年の大本命が」

 

ダイアンナ「早速プレイ開始と行くかね」

 

NOVA『いや、それは無理だ』

 

アスト「どうしてだよ? 期待してたんじゃないのか?」

 

NOVA『うむ、一言で言えば、いろいろと忙しいんだよ。例えば、これとか……』

NOVA『とりあえず、空想タイムでプレイしている「王女の対決」を終わらせるまでは、FFコレクション5に手をつけるわけにはいかない、と思っているのが今だ』

 

アスト「そっちは、いつ終わるんだ?」

 

NOVA『さあ。何せ、未プレイだった作品で、フローチャートもまだ作ってないし、2冊分の同時並行プレイだからな。まあ、現在で半分ほどはクリアできていると思うので、長くても7回めか8回めで終わるんじゃないか、と考えているが、もしも避けられないバッドエンドを迎えたりすると、予定が狂う可能性も若干ある。とにかく、未クリア作品のリアルタイム攻略記事って、先の展開が読みにくかったり、攻略必須アイテムとかの情報が分かりにくかったりするから、この回で終わる、という確約がしにくいわけだ』

 

ダイアンナ「途中で死んだりして、最初からやり直しってのもあり得るからね」

 

NOVA『そんなわけで、今回は購入報告記事と、ついでに安田解説の感想とか、初見のパラパラめくった第一印象を語って、ワクワクを高めるための記事ってことで』

 

解説の感想

 

NOVA『今回の作品集の目玉は何か、と考えると、正直言って分からない、というのが本音だな』

 

アスト「何だよ、それ? 表題どおり『火吹山の魔法使いの伝説』じゃないのか?」

 

NOVA『う〜ん、1集めは初邦訳の「火吹山の魔法使いふたたび」が目玉だと思うし、続いて「危難の港」「アランシアの暗殺者」「サラモニスの秘密」がそれぞれの個人的目玉だと思うんだな。つまり、何を差し置いても、それを真っ先にプレイしたいって新規作品なわけで』

 

アスト「まあ、他は昔、解いた作品の復刻改訂版だったら、ただのコレクションアイテムでしかないからな」

 

NOVA『もちろん、昔プレイした作品を久々に再体験したり、それを攻略記事にしたりで、楽しめたりもしているわけだが、やはり初体験の新鮮さの勢いは格別なものなんだよ』

 

ダイアンナ「初体験と言えば、新邦訳の『魂を盗むもの』や『巨人の影』はどうなのさ?」

 

NOVA『FF2集めの「危難の港」は、「盗賊都市」の続編的な意味合いでワクワクできたし、続く「アランシアの暗殺者」も話がリンクしている感が良かった。一方、「魂を盗むもの」は続編的な期待感はなくて、新しい作者の未知数な作品だからな。今回の5集で言うなら、ジョナサン・グリーンの「狼男の雄叫び」や、リアンナ・プラチェットの「嵐のクリスタル」に相当する。新鮮な感覚なんだろうけど、名作の続編的なワクワク感は薄い』

 

アスト「名作の続編と言えば、火吹山の魔法使いの伝説』が文字どおり、そうじゃないか」

 

NOVA『いや、微妙に違う。作者がリビングストン原案のキース・マーティン作だし、ザゴールというキャラは共通ながら、世界が馴染みの薄いアマリリアだからな。今回は、解説書のタイトルにもなってる「アランシア大陸を離れて」がテーマなので、単純な続編というよりも、新展開の拡張版、新たなる旅立ちといった感じの作品集なんだ』

 

ダイアンナ「確かに、5冊中3冊が初邦訳だし、そのうち2人は初お目見えの作家だし、初めて尽くしになっているね」

 

NOVA『これまでのFFコレクションが創始者のジャクソンとリビングストンを中心に展開されたのに対して、今回は5冊すべての作家が別々というヴァリエーション豊かな作品群だな。だから、安田解説もこれまでのFFシリーズの歴史の流れを総括する形じゃなくて、個々の作家の紹介や、作品の背景解説になってる。言わば、それぞれの章が各巻の後書き的な内容となっているわけだ。悪く言えば一貫性に欠ける構成だが、それぞれの解説が新鮮な内容で密度は濃いと思う。それを順番に追っていこう』

 

サソリ沼の迷路(アメリカのスティーブ・ジャクソン

 

NOVA『個人的に、今回の目玉と感じたのは、これだったりする』

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アスト「FF8巻、旧作の復刻版だが、目玉と言えるのか?」

 

NOVA『これは、アメリカのジャクソンのネームバリューの大きさゆえにだが、今回最も驚いたのは、表紙イラストだけでなく、中身のイラストも変わっているんだな。それでいて、旧作とはあまり違和感がない。つまり似て非なるイラストなんだけど、イメージが崩れていない。例えば、パラグラフ53番の〈カエルのあるじ〉だが……』

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NOVA『右が旧版で、左が今回の新版だが、昔のがコミック調にデフォルメされた体型なのに対して、新しいのは少しリアル寄りなぐらいで、大体はイメージを崩さずに特徴をつかんでいる』

 

ダイアンナ「絵は新しいのに、イメージを崩さないというのは、なかなか素晴らしいイラストってことだね」

 

NOVA『ああ。それと、今回は挙げないが、パラグラフ79番の山賊イラストが感じ入った。新版の山賊には、女性とも思える長髪イケメンが腕組みしていて、一瞬、萌えたりした。え? こんな性別不詳のイケメン山賊、旧版にいたっけ? と思って確認すると、リーダーの後ろに3人ばかりいて、だけど遠目で見目形がはっきりしない。この旧版→新版のイラストの変更が、比べてみると面白い。

『そして何よりも萌えるのが、パラグラフ131番の〈鳥の女あるじ〉さまだ。旧版は神秘的なドルイド聖女って感じだが、新版はギリシャ風の肉感的な美女って感じで、個人的な好みの差はあるだろうが、どちらも印象的で萌えられるのは間違いない。前に、「危難の港」のザンバー・ボーンがなあ、とそこだけは残念に思ったこともあったんだが*1、今回の「サソリ沼の迷路」の新イラストは旧作の雰囲気を上手く残しながら、アレンジの妙を楽しむことができる。しかも、2025年に発表されたということで、本作のために特別に描き起こされた絵ということが分かる』

 

アスト「つまり、何が言いたいんだ?」

 

NOVA『今回の復刻改訂版の「サソリ沼の迷路」と「さまよえる宇宙船」は、中身のイラストも昔のものが使えなかったようで、完全に新しく描き直されているってことだ。どこかから流用したのではなく、FFコレクションのためにリビングストンさんが旧作のイメージを崩さない絵師を手配してくれたらしい』

 

ダイアンナ「つまり、新作を作るのと変わらない手間暇が掛かってる本ってことだね」

 

NOVA『で、米ジャクソンがアメリカでもFF復刻に動き出したってニュースが昨年末に流れたわけだが、あの時は25冊って聞いたのに、この度の解説本では5年間で50冊を出版する予定になったらしい』

アスト「年間で10冊か。それは凄いな」

 

NOVA『同じ英語だから翻訳の手間は掛からないんだろうが、最初の5冊は6月に出版予定だそうだ』

ダイアンナ「アメリカで50冊だったら、日本でもそれぐらいは頑張って欲しいものだね」

 

NOVA『まあ、こっちは翻訳の手間が掛かるから、同じペースで続けられるかは分からんが、少なくとも過去5年で25冊を出して来たから、もう5年で25冊は続けられるかもしれんし、やはり無理だったということになるかもしれないが、応援はしていきたいと思う。とにかく、米ジャクソンの参戦が、今回のFFコレクション5の目玉であると俺が考えている次第だな』

 

アスト「確かに、米ジャクソンがサソリ沼で参入したことで、FFシリーズの門戸が大きく開いたきっかけにもなるもんな」

 

NOVA『安田解説では、米ジャクソンの略歴やら、FFシリーズの展開に与えた影響について、4ページほどにまとまって記されている。まずは米ジャクソン、そしてアランシア、旧世界に続く、第3の舞台として暗黒大陸クールが展開されるきっかけにもなったわけで』

 

ダイアンナ「サソリ沼は、クール大陸にあるわけだね」

 

NOVA『ワールドガイドの「タイタン」で明記された後付け設定だけどな。要するに、アランシアや旧世界でない雰囲気の作品をまとめてクールという別大陸に押し込んで、成立した舞台という流れだ。この辺の世界観の違いが、今回の作品集のテーマにもなるわけで、今後の発展にもつながることになるんだな、きっと』

 

狼男の雄叫び(ジョナサン・グリーン)

 

NOVA『で、日本のゲームブックファンにとっては新人作家の立ち位置になるが、FFシリーズ全体では中堅どころのベテランと言えるのがジョナサン・グリーンで、彼については6ページ以上に渡って、丁寧に紹介されている。デビューは53巻の「スペルブレイカー」(1993年)からで、その後、2010年まで作品を発表し続け、以降もシリーズの裏方サポートを熱心に続けて、現在においても貢献度が高いそうだ。40年のFF史を編纂した「You are the Hero」のまとめ手として、これからプッシュを掛けていく流れになっている』

 

アスト「7冊もFFゲームブックを書いているのは、キース・マーティンに並ぶ快挙みたいだな」

 

NOVA『大体、注目された作家でも3冊ぐらいしか書いてないからな。リビングストンBOXやジャクソンBOXみたいに、一人の作家でBOXが作れる人は稀だろう。以下がジョナサン・グリーンのFFゲームブックリストだ』

 

  • スペルブレイカー(53巻、93年)
  • 運命の騎士団(56巻、94年)
  • ミイラの呪い(59巻、95年)
  • ブラッドボーンズ(61巻、2006年)
  • 狼男の雄叫び(62巻、2007年)
  • ストームスレイヤー(63巻、2009年)
  • 死霊術師の夜(64巻、2010年)

 

ダイアンナ「ジョナサン・グリーンBOXが出ると快挙だね」

 

NOVA『どうだかな。さすがに彼一人のネームバリューで、BOXが売れるとは思わないから(実現したら俺は買いたいけど)、せいぜい5作中の2作だろう。5集めが出た直後にこんなことを言うのも何だけど、来年の6集めが出るとしたら、リビングストンの最新作「ブラッド島の地下迷宮」と、スカラスティック社最後の一冊、67巻の「死の門」と、後はウォーターフィールドの「仮面の破壊者」が入るかと思う。残り2冊の枠に、ジョナサン・グリーンとキース・マーティンが1冊ずつ入るか、米ジャクソンの「深海の悪魔」とか、リビングストンの未復刻の何かが来るのが妥当かと思うが、実はジョナサン・グリーンも今年、スカラスティックから1本、新作を発表するとの予定がある(タイトル未定、シリーズ73作め)』

 

アスト「実現すると、15年ぶりの新作ってことかあ。だったら、6集では無理でも、7集めぐらいの収録になるかもな」

 

NOVA『裏方に回っていた、(日本では)知られざるベテランの現役復帰という話題に、少し興奮しそうな俺がいる。まあ、それよりも期待なのは「You are the Hero」の邦訳出版なんだが』

 

嵐のクリスタル(リアンナ・プラチェット)

 

NOVA『続いて、本集収録のFF最新刊に当たる69巻なんだが、新人ながら父親のネームバリューと、FFシリーズ公式初の女性作家ということで話題に挙がったのが、この本だ』

 

アスト「まるで、ゴジュウジャーのメインライターに抜擢された人みたいだな」

 

NOVA『ああ、タイミング的にそういうイメージが持てるな。内容的にはまだ読んでいないので何とも言えないが、パラパラとイラストだけ眺めてみると、21世紀風のメカロボが登場するようなファンタジー世界らしい、浮遊群島パンガリアってのは』

 

ダイアンナ「アランシアの海上の上空に浮かぶ擬似的な異世界みたいだね」

 

NOVA『で、この作品の主人公は、「モンスター誕生」のガレー船船長、キャプテン・ハヴォックで続投しようかな、と考えていたら、いきなり困ったことになった』

 

アスト「ほう、NOVAが困ると喜ぶオレがいる(笑)」

 

NOVA『何が困ったかと言うと、最初の背景で「きみはパンガリアで生まれ育った」とあって、うおっ、こっちの想定をいきなり覆されたわけだよ。どう辻褄合わせをしたらいいか、検討しないとな、と考えた次第』

 

ダイアンナ「どう辻褄合わせをするのか見物だね」

 

NOVA『今、背景を読んで修正案が一つ。本作の主人公は、〈空の守り人〉の新人という設定だが、隊長の名前がハレックという。つまり、ハヴォック船長はパンガリアに迷い込んで、そこでハレックと改名して、守備部隊の隊長になったという設定はどうだろうか? だから、新たな主人公は「モンスター誕生」の主人公の部下にして、弟子ということになる』

 

アスト「まあ、よくある設定だな。前作キャラの息子とか、後輩とか、弟子ってのは、続編に付きものだ」

 

NOVA『果たして、その設定で矛盾なく収まるかどうかは、プレイしてみないと分からんが、ハレック隊長がどういうキャラなのかをチェックしてから、何とかつなげてみることにする』

 

アスト「とにかく、『嵐のクリスタル』はファイナル・ファンタジーアルシャードエベロンソード・ワールド2.0などと同じ新世紀スタンダード、メカの登場するファンタジー世界ってことでいいんだね」

 

NOVA『明らかに、アランシアとは異なる文明の発展をしたわけだな。まあ、「モンスター誕生」のガレーキープがあるわけだから、飛空艇はアランシアにもないわけではなかったわけだが、それでも珍しい文物であったことは間違いない』

 

ダイアンナ「FFシリーズというと、どうしても懐古的なレトロファンタジーの印象が強いけどね」

 

NOVA『それでもFFコレクション2集が、ホラーとかスーパーヒーローとか、ジャクソンの新規開拓、ジャンルを広げる精神が満ちた取り合わせだったし、今集も宇宙SFの第1作が復刻したことから考えて、新しい風、新基軸を意図したラインナップというわけだ。その象徴となるのが「嵐のクリスタル」なんだと思う』

 

アスト「つまり、3集がリビングストンの掘り起こし、4集がジャクソンの掘り起こしというように懐古色の強いBOXだったのに対し、今回は新しさがテーマだと?」

 

NOVA『世界観を広げる、と言ってもいいな。米ジャクソンも、かつてFFシリーズに新しい風を吹き込ませた象徴的な作家と言えるし、伝統と新奇さの融合というのがFFシリーズのスタート時点からの眼目だったはずだ』

 

アスト「80年代だと、書籍というスタイルが伝統で、それに新奇性に満ちたゲームというジャンルを結びつけたのが、ゲームブックということになるか」

 

NOVA『その意味で、今回の5集は、2集の精神を引き継いで、伝統からの脱却、新規拡張を目指した作品群とまとめられるだろうな』

 

火吹山の魔法使いの伝説(リビングストン&キース・マーティン)

 

NOVA『それで、本集の目玉タイトルはこれなんだが』

 

ダイアンナ「目玉は分からない、と言ってなかったか?」

 

NOVA『いや、公式に目玉作品はこれで間違いないと思うんだが、俺にとってはそうでない、と言いたかったわけだ。俺にとっては、米ジャクソンの「サソリ沼の迷路」が目玉で、この作品が後に来る感じ。何よりも、FFコレクションに米ジャクソンが来て、しかも彼が改めて自らもFF復刻に乗り気だってことが今集の一番のトピックだと考える次第だが、今回は作品のヴァリエーションが多彩で、他にも目玉があるという主張は筋が通る。

『宇宙SFが好きだという向きには、「さまよえる宇宙船」キターとなるだろうし、ジョナサン・グリーンにスポットを当てる流れもあるし、リアンナ・プラチェットの新作が新時代のFFとして注目することもできる。しかし、旧作懐古の向きには、1集めの「火吹山の魔法使いふたたび」のその後のストーリーってことで、「ザゴール伝説」を待っていたファンもいるだろう』

 

アスト「つまり、目玉作品が多すぎて、それぞれの特徴が別々って言いたいわけか」

 

NOVA『ここまで作者がバラけたコレクションは初ってことだよ。異なる作家のアンソロジー集みたいな趣きだ。しかも、目玉作品がリビングストン名義だけど、実質は「原案リビングストン、作キース・マーティン」だからなあ。本作の背景事情はいろいろ複雑で、安田社長も最長の10ページを使って、みっちり解説してくれている』

 

アスト「だったら、本作が目玉と言って問題ないじゃないか」

 

NOVA『火吹山はFF第1作の元祖なので、コレクションでも1集、3集、4集のそれぞれでオマージュ作品を収録している。2集めでは、「危難の港」のバッドエンド項目でチラッと触れられているぐらいだが』

 

ダイアンナ「ええと、1集めは『火吹山の魔法使い』と『火吹山の魔法使いふたたび』だったね。3集めは『雪の魔女の洞窟』と『巨人の影』で登場した」

 

アスト「4集めの『サラモニスの秘密』でも、夢の中で序盤の迷宮が登場していたな」

 

NOVA『そう。しかし、舞台としての火吹山や、ザゴールの遺産の巨人については触れられたが、肝心のザゴールが「ふたたび」で復活を阻止された後、どうなったかの続編が「ザゴール伝説」だな。元々は、92年の「ふたたび」の翌年、93年にFF54作めとして登場した作品だが、こちらでは「ふたたび」の4年後ぐらいになった』

 

アスト「その時期は、ジョナサン・グリーンのデビュー時期でもあるが、それ以上にキース・マーティンが大活躍していた頃合いだな」

 

NOVA『「魂を盗むもの」以降の作品リストを挙げるとこうなるか』

 

  • 魂を盗むもの(34巻、88年)
  • 吸血鬼の城(38巻、89年)
  • 混沌の支配者(41巻、90年)
  • 破壊の塔(46巻、91年)
  • アンデッドの島(51巻、92年)
  • ナイトドラゴン(52巻、93年)
  • 火吹山の魔法使いの伝説(54巻、93年。リビングストン名義)
  • 吸血鬼の復讐(58巻、95年)

 

ダイアンナ「54巻を入れると、8作品を書いているんだね」

 

NOVA『で、このキース・マーティンが本名のカール・サージェント名義で、ゲームブックの背景小説になるザゴール小説4部作「ファイアストーム」「ダークスローン」「スカルクラッグ」「デーモンロード」を93年から94年に発表している』

 

アスト「実は、『ザゴール伝説』ってゲームブックの枠内に留まらないんだな」

 

NOVA『壮大なメディアミックスの背景がある作品なんだな。舞台となるアマリリアの初出は、パズルブックの「魂の宝箱と12の呪文」(87年。邦訳は90年)だが、俺は持っていない。その前にジャクソンの「魔術師タンタロンの12の難題」が85年(邦訳は87年)が出て人気を博したので、その流れでリビングストンもこしらえた作品だが、タンタロンほどはメジャーにならなかったようだ』

 

アスト「でも、『ザゴール伝説』の背景になる、と」

 

NOVA『今回の安田解説では、そのパズルブックの紹介と、続いてリビングストンが93年当時に力を注いだボードゲーム版「ザゴール伝説」の話をして、最後に小説4部作で話を結んでいる。そんなわけで、リビングストンはゲームブック以外のボードゲームの方に力を注いだために、キース・マーティンにゲームブック執筆を任せたという背景が語られた』

 

ダイアンナ「小説はどんな内容?」

 

NOVA『1巻がパズルブックにまつわるデーモンとの戦いを描き、そのデーモンは倒されたものの異世界の魔術師ザゴールと融合合体してアマリリアの脅威となったので、小説の2巻でゲームブックの内容と同じように勇者の手で倒される。しかし、ザゴールはまだ死んでいなくて、3巻、4巻に続いて、アマリリアとアランシアを股にかけた大冒険譚が描かれて完結するらしい』

 

アスト「その小説も訳される予定はないのか?」

 

NOVA『安田社長も「トロール牙峠戦争」の続編2作と合わせて、意欲を示してはいるんだが、現段階で確約はできない、としている。まあ、今回は背景事情の紹介だけで奥の深さを示したって形』

 

さまよえる宇宙船(イギリスのスティーブ・ジャクソン

 

NOVA『さて、最後はイギリスのジャクソンに戻って来て、宇宙SFものだ。これで、英ジャクソンの作品はコンプリートということになる。あと、改めて思うに、FFコレクション4集までは「魂を盗むもの」を除いて、スカラスティック社の復刻作品ばかりだったが、同社の作品は最新作の「ブラッド島の地下迷宮」までで22本。つまり、今回のコレクション5集で数的に抜いたことになるわけだな』

 

ダイアンナ「あと残っているのは、『死の門』と『ブラッド島』だけか」

 

NOVA『当然、6集めの選択候補になるわけだが、いずれにせよ、今回の選択作品は「嵐のクリスタル」を除いて、全てが昔のパフィンブックス版やウィザードブックス版よりの復刻になるわけで、しかも「サソリ沼の迷路」はウィザードブックス版でも復刻されていなかったので、たぶん5集の中でも一番、交渉に手の掛かった作品ということになるな』

 

アスト「『さまよえる宇宙船』はイラスト関連で復刻が難しいと言われて来たが、それでもウィザードブックス版で復刻されている。英ジャクソンの作品をコンプリートするために、新たなイラストまで用意して、復刻に漕ぎつけた。それ以上の情熱をもってして、今回は『サソリ沼の迷路』も復刻させたわけだな」

 

NOVA『まさに英米2大ジャクソンの共演BOXと言ってもいいわけだよ、今集は。そして、たぶん、それを実現するために、米ジャクソンとの交渉があった。交渉したのはリビングストンさんか、安田社長かは分からないけど、その過程で米ジャクソンもFFシリーズの復刻に興味を持って、自分ところでも参加するという流れになったと思われ』

 

ダイアンナ「イギリス→日本→アメリカという順にFFゲームブック復刻の流れが波及して行ったわけだね」

 

NOVA『米ジャクソンが乗り気になった以上、「サソリ沼の迷路」が新たなイラストレイターも付けて、新規復活を果たすという労も厭わない流れになって、だったら、ついでに「さまよえる宇宙船」もそれで行こうって話になったんじゃないかな。今まではカバーイラストは変えても、本文イラストは変えないって形だったけど、これで昔のイラストが使えないなら、新しくイラストを用意する、という荒技が実現したわけだ』

 

アスト「ただの復刻を越えて、新たに作品を創り直すということもしてるんだな」

 

NOVA『ついでに、「さまよえる宇宙船」ではパラグラフ10、151、210、223、326のミスと思しき箇所を翻訳に際して、修正したそうだ』

 

ダイアンナ「ええと、技術点判定で成功したのに失敗した扱いになって、成否が逆転してるって話か?」

 

NOVA『そう。俺の手持ちの旧作では、それがミスだと判断して、勝手にパラグラフを鉛筆で書き改めてプレイしていたが、一応、今回、公式で翻訳に際しての改訂という形で説明されたわけだな。この辺、マニアは細かいことにこだわるからな。「モンスター誕生」の方向を示す立て札が旧版と入れ替わったために、地形の位置関係がズレてしまったことを指摘されたり、前作「サラモニスの秘密」でキャラ作成ルールで大きなミスをしたこともあって、その辺は少々、慎重になっているのかと思ったり』

 

アスト「今回はミスはないのか?」

 

NOVA『エラッタはまだ出てないが、前回みたいなプレイに支障をきたすレベルなのは、ないだろう、たぶん。で、それはとにかく、今回の解説で俺が期待していたのは一つあってな。実は昔の解説本で、安田御大は「運命の森」「さまよえる宇宙船」「トカゲ王の島」の3作を手厳しく批判していたんだな。その意見が今回どうなったのかを気にしていた』

 

アスト「昔と言っても、90年代の話だろう? あれから30年も経ったら、意見も多かれ少なかれ修正されるだろうさ」

NOVA『話の文脈もあるからな。「運命の森」については、後のリビングストンらしくなく、パズル性に重点を置きすぎて、イベントが散発的な対決色を伴うものばかりで、ストーリー要素が薄め、と称しながら、その後の「盗賊都市」の方を持ち上げる流れだ。また、「トカゲ王の島」についても、「雪の魔女の洞窟」に至る世界を広げる過程を評価しつつ、島という閉鎖環境で物語が閉じてしまったことを残念視していたわけだが、基本的にリビングストン作品に対しては、世界を伸びやかに描き、広げていく手法を称賛しているのが目立つ』

 

アスト「それがFFコレクション3では、一転してどちらもプッシュするわけだな」

 

NOVA『さすがに、自分ところで売る商品については、評価を下げることは書きにくいよな。「運命の森」については、過小評価気味だったので改めて分析と称しつつ、やはりヤズトロモという人物や、ストーンブリッジという舞台を用意したことで、そこからの発展につながる重要作品という再評価を示したわけだ』

 

ダイアンナ「そりゃあ、『火吹山ふたたび』や『危難の港』でもオマージュが見られるわけだし、重要作品なのは間違いないだろうさ」

 

NOVA『90年代は「盗賊都市」をこれでもか、とプッシュしていたのは、AFFサプリメントや「真夜中の盗賊」の影響も大きかったと思うけど、その比較対象として、「運命の森」「トカゲ王の島」を下げる方向性の論稿になったのは否めない。ただ、「運命の森」はその後も「雪の魔女」「恐怖の神殿」「甦る妖術使い」「龍の目」「危難の港」でたびたび引用されて、アランシアの冒険者にとっては、ストーンブリッジが心の故郷だという意見も多いわけで』

 

アスト「今は『運命の森』をプッシュするタイムだな」

NOVA『それはともかく、「さまよえる宇宙船」は、ジャクソンの数少ない失敗作で、システムを過剰に煩雑にした割に効果が薄かったというのが、かつての評価だ』

 

ダイアンナ「システム的な特徴は、複数キャラ、宇宙船という乗り物、銃撃戦などになるか」

 

NOVA『一気にいろいろ詰め込みすぎたというのが概ねの見方だけど、おかげでオーソドックスな王道リビングストンと、アイデアマンの奇才ジャクソンという評価が生まれる理由にもなる。そして、「さまよえる宇宙船」の評価は、FFの可能性を広げて12巻の「宇宙の暗殺者」以降の新人作家のルーツになって行った、という形に帰結する』

 

アスト「ファンタジーという王道には及ばないけど、未来SFというジャンルをFFシリーズに持ち込んで可能性を広げた記念作ということだな」

 

NOVA『作品単体としては、実験作の趣きが強くて手放しで傑作とは言えないけれど、その後の礎としては大きな役割を果たしたと言えようか。そして、今回はこの作品を単独で再評価する解説文が5ページほど。で、注目点は「スタートレック」とSFRPGの「トラベラー」の影響だ』

 

アスト「『トラベラー』か。確か、最初の翻訳者は安田御大だったんだな」

 

NOVA『そうなんだ。だから、今回、安田社長が唯一翻訳した作品が「さまよえる宇宙船」で、実は最もこだわりの強い作品でもあると思う。だから、SFゲームブックの礎としての実験作という観点ではなくて、作品のシステムよりもストーリー面を味わう風の論稿で、改めて新鮮に読むことができた』

 

アスト「昔は、SFゲームブックを5冊セットで論じてたのが、今回は単独での内容評価だと」

 

NOVA『で、注目は、既存のFFが戦闘重視の傾向があるのに対し、本作が戦闘しなくてもクリアできるという点に注目。ある意味、最もファイティングというシリーズ名から離れた作品だと言える。これは元ゲームのトラベラーも、戦闘のリスクが大きいので、D&Dなんかとは違って、いかに戦闘を回避してストーリーを楽しむか、に重点を置いたTRPGである点もあって、情報収集や謎解き、そして正解ルートではないけど宇宙SFの物語要素の追体験など、FFシリーズのストーリーゲームとしての枠を広げた点を改めて評価している』

 

ダイアンナ「つまり、安田御大のSF好きな部分がたっぷり込められた解説文ってことだね」

 

NOVA『そして、米ジャクソンで始めて、英ジャクソンで締めくくる今回の構成に感じ入ってみたり。実のところ、前回のジャクソンBOXの解説文が短かったので、物足りなさを覚えていたんだが、今回は最後のジャクソン作品として、きれいにまとめたな、と感じた』

 

アスト「これで、英ジャクソン作品はコレクションで全部復刻されたことになるな」

 

NOVA『英ジャクソンから米ジャクソンにバトンタッチされたようにも思えるわけで、次は「深海の悪魔」「ロボット・コマンドゥ」がいつ来るのかな、とワクワクしている俺がいる』

 

アスト「いや、少し気が早くないか?」

 

NOVA『しかし、去年も2月にコレクション5を匂わすようなことをXポストで言っていて……』

NOVA『公式にコレクション5の発売決定の報が出されたのが、4月末から5月頭の頃合いだ』

ダイアンナ「すると、これから3ヶ月の間に、次のコレクションに向けての話し合いが少しずつ動き始めるってことだね」

 

NOVA『で、それに向けて、こっちはどう動くかの話を、次の記事でしたいわけだ』

 

今後の予定

 

アスト「お前はどうしたいんだ?」

 

NOVA『したいことはいろいろあるが、コレクション5では「サソリ沼の迷路」を最初に攻略しようと思う。プレイヤーは、アストと、ダイアンナ、カニコングの3人で確定だ』

 

アスト「って、『最後の戦士』『死神の首飾り』『恐怖の神殿』って言ってなかったか?」

 

NOVA『だけど、コレクション5で新イラストの「サソリ沼の迷路」を見て、気が変わったんだよ。元々、「サソリ沼」は攻略20本め記念にしようと思ってたんだが、結局、20本めは「巨人の影」になった。だったら、FFC5発売記念で「サソリ沼」を21本めの攻略記事にしてもいいかな、と考えた次第。「恐怖の神殿」については、次のFFC6の収録作品になる可能性もあるわけだから、少し待ってみる。とりあえず、「サソリ沼」で善と中立と悪の3回攻略をやりたいと言っていたわけだから、一度始めると2ヶ月から3ヶ月ぐらいはかかるんじゃないかな、と思う。まあ、3月にスタートして、ゴールデンウィークまでには終わるんじゃないかなあ、と思ってる』

 

ダイアンナ「そうかあ、次は『サソリ沼』かあ」

(当記事 完)

*1:全てが悪いわけじゃない。シルエットで登場したハカサンのイラストが、いかにもミステリアスな忍びの女性という雰囲気で、そこは悪くなかったし。ザンバー・ボーンももう少し影のある不気味さを演出していれば良かったんだろうけど、神輿に担がれた骸骨ってコミカルな絵面がなあ。


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