Quantcast
Channel: ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙
Viewing all articles
Browse latest Browse all 69

「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その13、最終回)

$
0
0

癒し手クエストIF

 

リサ(ダイアンナ)「前回、あたしはエルフのアッシュ兄さんの助けを借りて、ついに癒し手ペン・ティ・コーラのいる洞窟までたどり着いた」

 

アス・ラル(アスト)「とうとう、氷指山脈から始まる長い冒険の旅も終わるんだな、お嬢」

 

リサ「いや、違う。あたしの冒険はまだまだこれからさ。そのためにも、今はこの死の呪いを解かないと」

 

アス・ラル「それでこそ、お嬢だ。吸血鬼なんかを夢見るんじゃなくて、生きて冒険者生活を満喫しないとな」

 

リサ「いや、プレイヤーは吸血女王なんだから、そこまで否定されると悲しくなるんだけど(涙目)」

 

リバT『クイーンがシャリーラに感情移入したくなる理由が分かりました』

 

リサ「背景を知ると、何となく不幸な女にも思えるんだよね。だから彼女にも救済を与えたくなるんだ。ともあれ、今回はまず、癒し手クエストの別ルート。アッシュ兄さんに会わない道をチェックしようと思う」

 

リバT『パラグラフ30から南の385に向かったルートですね。まずは体力1点を失ってから、丘の間の峡谷に目星を付けます。その途中で洞穴を見つけるのですが』

 

リサ「これはいい洞穴だ。吸血鬼としての最初の寝ぐらにちょうどいいかも、とついつい考えてしまう」

 

アス・ラル「シャリーラの吸血鬼思考に引きずられているんだな。早く呪いを解かないと」

 

リバT『洞穴は完全な闇です。ランタンなどの明かりを持たないリサさんは、手探りで探索することになります』

 

リサ「吸血鬼らしく、夜目は利かないのか?」

 

リバT『まだ吸血鬼ではありませんので、夜目など備わってません』

 

リサ「やはり、人間の体は不便だ。少なくとも、夜は吸血鬼の方が過ごしやすい。朝から昼は人間に、夜になると吸血鬼にフォームチェンジするということはできないのか?」

 

リバT『人狼だったら、昼は人間、夜は獣なんてものもありかもしれませんが、変身を自己制御できるようにならないと、やはり生きづらいと思いますよ』

 

リサ「まあ、吸血鬼や人狼のコミュニティでも築けばいいのかもしれないが、今はそんなことを考えても仕方ない。とにかく、闇の中を進む。あたしは盗賊。一応は、都会の闇に生きる女だったんだからね」

 

アス・ラル「オレが明かりや炎を灯す機能でも付いていたら良かったんだがな」

 

リバT『それで運だめしを求められるんですが、失敗して兜をかぶっていなければ、転倒して頭を打って、バッドエンドですね』

 

リサ「すべって転んで失神って奴か。そんな死に方で吸血鬼化なんてするのも何だか情けない。とにかく、運よく転ばなかったということで」

 

リバT『すると、闇の中で、ランタンを持ったナイト・ストーカー(夜歩き)という亡者に遭遇することになります。技術点11、体力点8という能力ですが、リサさんは闇の中で不利な戦闘ということで、攻撃力を2点下げないといけません。実質的に、相手の技術点が13になったと言えましょう』

 

リサ「シチュエーション的に、本作最強の敵とも言えるわけだね」

 

リバT『なお、頑張って倒しても、得られるものは何もありません。ぶっちゃけ外れの場所です』

 

リサ「慌てて洞窟から出て、次へ向かうとしよう。ナイト・ストーカーは危険、と」

 

もう少しIFルート

 

リバT『ナイトストーカーの洞穴に次いで、外れルートの続きです。体力をさらに1点消耗しながら、峡谷をさらに先へ進むリサさん。しかし、運悪くガラガラヘビを踏んでしまい、最悪、噛まれて4点ダメージです』

 

リサ「しくしく。このルートでは、ろくな目に合わない。やはり、南ではなくて、東へ向かうのが正解だったと分かるんだね」

 

リバT『後で地図にまとめましょう。ともあれ、南ルートの未遭遇イベントは以上の2つです。その次はパラグラフ252番で、前回も解説した人オークのイベントに合流しますから』

 

アス・ラル「人オークはアッシュ兄さんと別れた後のイベントだから、その時点でアッシュ兄さんとは会えないことが確定、と」

 

リバT『一応、こちらでも不利ながら解けないことはないのですが、アッシュ兄さんに会わない=癒し手の背景情報が分からないってことです。本リプレイでは、癒し手の背景はヤズトロモさんが語ってくれましたが、原作ゲームブックでは、癒し手の話はレッドスウィフトとアッシュから情報を得ることになっていますので』

 

リサ「アッシュ兄さんは短い登場シーンながら、出会うとなかなかに印象的で格好いいキャラだと思うね。射撃にドジっても、すぐに態勢を立て直して、主人公の戦いを支援しながら、とどめの美味しいところを持って行くし、川に落ちても救い上げてくれる。何というか隙を見せない有能キャラって感じ。シャリーラが惚れるのも無理はない」

 

リバT『でも、向こうは堅物キャラなので、絶対に人間とそういう関係にならないことは断言できます。死んだ彼氏のお兄さんを恋愛対象にしても、この恋は決して報われませんね』

 

リサ「まあ、赤ツバメさんとそういう関係になったのも、当初のプロットにはなかったからね。彼の死をより劇的にするために、悲劇のラブロマンス要素を思いつきで導入しただけだから」

 

リバT『作者は、ラブコメが書けないと言っておきながら、悲劇のラブロマンスは結構好きなのです。無理心中物とか、晴らせぬ恨みを晴らす女の涙とか、恋愛=悲劇の予兆みたいな回路ができてしまっているとか』

 

アス・ラル(アスト)「その意味では、オレとアニーがハッピーに結ばれているのは、奇跡と言ってもいいのかもな」

 

リバT『確かにそうですね。作者は昔から趣味で小説(の一部シーン)を書くこともしばしばですが、どうもハッピーな恋愛劇は書きにくい、どうしても悲劇に転がってしまう、そっちの方が性分だ、ラブコメなんておふざけは面白いと思わん……と考えていたようです。でも、自分が恋愛劇の当事者じゃなくて娘設定に切り替えると、書けることに気づいたみたいです。父親役なら娘の不幸よりも幸せを願う回路がうまく構築できたわけですね』

 

リサ「まあ、何でもかんでも恋愛脳というのも偏っていると思うけど、人間ドラマとして大きな比重を占めているのも間違いない事実。好きな相手のことだから、積極的に関わって行こうとか、傷つき、戸惑い、揺れ動く心情とか、そこでしか得られない心の栄養素があるものかもしれない。問題は、そういう栄養素を自分が与えられるようにするには、リアルにせよ、フィクションにせよ、どういう体験を土台にするかで、そういう作者の想いすら他人の借り物(パクリ)でしか書けないと、人の心を打つような作品には到達できないわけだ」

 

リバT『何かの影響を受けたり、何かをバイブルとして崇めるのは結構ですけど、それを表面的にコピーするだけなのは初心者レベルの創作で(中高生の創作始め)、プロを目指すとなれば、自分が好きな作品のエッセンスをどう自分の作品にブレンドするか、という点で、そのエッセンスに自覚的でなければならない、と思います。

『というか、素材をそのまま使うと劣化コピーにしかならないので(原作ノベライズや二次創作ではコピーの巧さも武器にできるけど)、素材をいかに要素分解して、元ネタはあるけど、十分に崩して、解きほぐして、原型を留めないレベルまでエッセンスを抽出したうえで、新しく加熱して違うスタイルでありながら、素材のフレーバーは漂わせている……という「◯◯風味のオリジナルスープとソテーのセットメニュー」ぐらいがよろしいのではないでしょうか』

 

アス・ラル「で、本リプレイは『雪の魔女の洞窟』と称しつつ、原作にないラブ要素や、魔剣とか、女主人公に憑依する敵魔女とか、独自要素をいっぱい混ぜこぜして、それでいて、なおかつ『雪の魔女の洞窟』として、帰結させようって流れだな」

 

リバT『テーマが呪いからの解放ですから、恋愛も含めて呪縛というものをあれこれ考えるうちにこうなった、というのは作者談。さておき、IFルートの続きですが、最初に東ルートを選んだ際も、途中の205番で、焚き火に惹かれて川をジャンプで乗り越えようとしたら、アッシュ兄さんと会えなくなってしまう可能性を前回、触れました』

 

リサ「川に落ちる危険性をわざわざ冒して、不利になるルートだから避けたって話だな」

 

リバT『もう、呪いで体力が落ちて、普段なら難なくこなせる程度のジャンプさえできなくなっているのですね。2分の1の確率で川に落ちてしまい、いろいろ失ってしまいます。もしも背負い袋の中に金貨が400枚以上持っていれば、それが重荷になって溺れ死ぬ危険性もありますので、背負い袋を捨てて無一文になる決断をしないといけないケースもあって、ここまで川落ち後のドラマや葛藤を描いたイベントも稀なのでは、と考えます』

 

アス・ラル「冒険映画では、たまにある話だな。『欲張らずに荷物を捨てて、命だけでも守るんだ』『イヤだ。せっかく手に入れた宝、こいつを絶対に持ち帰るんだ。えっ、うわー』『くっ、欲張りの末路は案の定か』って感じのシーンが」

 

リバT『インディー・ジョーンズの3作めでは、峰不二子並みの裏切りをかます女性研究者がヒロインでしたが、彼女が最後に欲にまみれて命を落とすシーンが変化球ですね。父親との関係修復のドラマだったので、父子を共にたぶらかす悪女だけど自分の研究には真摯で、そのために利用できるものは何でも利用する強かな女、だけど情愛も見せるという複雑な役どころをボンドガールのアリソン・ドゥーディが熱演したという』

 

リサ「普通は、欲深で愚かな死に様って、太った男が見せがちだけど、クールで知的に見える美女がそういう死に様を見せるのが、なかなか印象的というか、むしろ従来は男が見せてきた愚かな役回りを、女優が見せるというのも本来の男女平等の精神に叶うかもしれない」

 

リバT『まあ、そういうのは、フェミが嫌うというのもありがちですけどね。男女平等と言いながら、負担は全部、男に押しつけつつ見下す(要するに奴隷を侍らす女王になりたい)、という姿勢を露骨にして、男のプライドを踏みにじったら、男からそんな女はいらん、と見限られて、ますます男に恨みをこじらせる? この辺、相手を立てるという姿勢まで捨てると、ただのわがままでしかないですからね』

 

リサ「社会文化が培ってきた男女の慣習に、自由の観点から批判するのは結構だけど、極端に走ると既存の慣習の美点まで捨て去って、批判はするけど、新たな美点を構築できずに、破壊だけで終わってしまうことになりかねないわけで」

 

アス・ラル「性差による社会論は、フィクションのキャラの描き方まで考え合わせると面白くなると思うが、男女の役割逆転というだけでも、新たなイメージが見えてくる時代かもな。ゲームの世界では、男戦士とサポート役の後衛ヒロインという構図に対して、女戦士と男性術師という構図を示したら、女に前で戦わせて自分は後ろで支援なんて男はズルいとか言い出す女性も現れて、たぶん、ゲーム界がどういう変遷でそういう構図を示すようになったかは考えていない」

 

リサ「単純に今、見えているものに感情で反応しているだけだからね。プリキュアもそうだけど、『女の子だって戦いたい』が最初のテーマで、男性の演じてきたバトルヒーローを男ばかり活躍してズルいと訴える女性の社会進出に伴って、生まれた作品シリーズが、今度は女性ばかり戦わせて、と批判文脈で使われる」

 

アス・ラル「単純に言って、一つのフィクションで全ての要素を取り込んで誰もが満足する完璧な作品なんて作れないんだから、作品ごとのテーマを無視して、自分の好きな要素が入ってないから叩く、というのは感想文にしても低劣なんだな。まあ、自分の好きな要素が入ってないから不満だってのは分かるが、それは個人の気持ちであって、作品価値とは何の関係もないエゴだ」

 

リバT『エゴでも、そういう意見が共感を呼んで、数を増やせば社会的な通念に発展する可能性がありますが、あまりに過激な意見は通念になる前に反論によって妥当な見解に磨かれる、というのが従来の議論の理想のあり方でした。だけど、ネットでの議論が、意外にそうなっておらず、先鋭化された極端な意見同士のぶつかり合いと、相容れない分断状態になっているのが現状ですね』

 

リサ「この辺、ややこしい問題だと思うけど、『雪の魔女の洞窟』はFFシリーズ初の女性ラスボスという点で、面白い視点で考えるきっかけにはなったと思うよ」

 

リバT『リビングストンのアランシア次回作、14巻の「恐怖の神殿」ではボスのマルボルダスの他に、サポート役を務める副ボスの大神女リーシャというキャラが登場して、悪女キャラの後継者になっているようですね。最近、確認して、ああ、そういうキャラがいたなあ、と感じ入ってる次第ですが』

 

リサ「ええと、何だかそのリーシャって、あたしのパチモンっぽい名前なんですけど?」

 

リバT『いや、向こうが公式に先なので、パチモンって言ったら、こっちがそうだと言われて負けてしまうのですが、別にリサさんの名前は、リーシャからパクったわけでないのは、賢明な読者諸氏にはお分かりでしょうしね』

 

リサ「残飯漁り→リーサン・パンザ+ツァという姓のNPCヒロイン→リサ・パンツァというネーミング経緯だからね。大神女リーシャなんてキャラは、作者も綺麗さっぱり忘れていたんじゃないか」

 

リバT『このネタだけでも、本作の次のリサさんの冒険は決まったようなものですが、さておき。ええと、川落ち話の続きですね。何とか、川から這い上がったり、そもそも川に落ちずに向こう岸に到着すると、山男(技6、体5)というザコ敵と戦って、倒した後に焚き火で炙られたアヒルの肉を食べて、体力4点回復というラッキーな状況に』

 

リサ「川落ちというリスクを気にしなければ、お得なイベントだね」

 

リバT『ですが、そのリスクが大きいので、お勧めはできないということですね。さて、アヒル肉を食べた後は、選択肢が2つありまして、1つはもう一度、川の北岸に戻ってアッシュさんと遭遇する。もう1つは、このまま川の南岸の峡谷伝いに東へ進むことです。後者の場合は、次の選択肢がナイトストーカーの洞穴になって、南ルートを最初から辿る形ですね』

 

リサ「アッシュさんに会う方なら、ちょっとした寄り道で済むけど、南ルートを最初から辿る形だと、思いきり遠回りになって、何のメリットもないわけだね」

 

リバT『イベントを数多く楽しめるというメリットがありますよ(笑)』

 

リサ「死の呪いで、どんどん体力を消耗しているときに、そんな余裕があるか!」

 

           168偽癒し手の小屋

                l

30月岩山地に入る→46ウジの蔦→119→205→115アッシュ

 (川〜〜 l   〜〜〜〜      l                  ↓   〜〜)

385夜歩きの洞穴     ←ー山男の焚き火  吊り橋と丘トロール

      ↓                  ↓

377ガラガラヘビ→    252人オークの縄梯子  ←85死の鷹

              ↓

           92バーバリアン→319癒し手の洞窟ー峡谷の終点→力尽きる

                      ↓

                  75癒しの儀式の始まり

 

アス・ラル「こう地図にして表すと、アッシュに会う東ルートじゃなくても、南ルートでクリアすることも可能そうだな。ナイトストーカーの洞窟をスルーすると、ガラガラヘビを運だめしで回避するだけで、人オークのところまで来れる」

 

リバT『その間に失う体力点は2点、運点1点で済みますね。一方、東ルートですと、リプレイどおりの最適解を選んだとして、ウジ蔦とトロール吊り橋で運点は差し引きゼロ、体力点は3点減って4点回復の差し引き+1です。まあ、上手く進めば東ルートの方が明らかにお得ですけど、南ルートでも十分リカバリーが効く程度かと』

 

リサ「いろいろ紆余曲折はあったが、いよいよ癒し手ペン・ティ・コーラ老師と対面して、不死鳥のように死から再生できる儀式の始まりだ」

 

不死鳥の儀式

 

リバT『それでは、ついに伝説の癒し手さんとの対面です。この儀式は、リビングストンさんの前作「トカゲ王の島」における中盤の呪術師の試練イベントを、クライマックスに持ってきて、より劇的なドラマに発展させたものと言えます』

リサ「ああ、セルフオマージュか」

 

リバT『セルフオマージュと言っても、トカゲ王も雪の魔女も原書は同じ1984年の作品ですから、似たようなネタの使い回しというか、手応えを感じたので、発展継承したということでしょう。マンゴさんをクロスナイフに宿らせたネタを使い回して、剣精霊アス・ラルが誕生したようなものです』

 

アス・ラル「なるほど。書き手が思いついて試しに書いたネタが、自分でも上手くハマったから(使えると踏んだから)、もう少し膨らませてみようってことだな」

 

リサ「試しにやったら、上手くできた。それなら……ってネタの膨らませ方は、二番煎じと見なすか、発展継承と見なすかは評者次第ってことだね」

 

リバT『この辺は、評者の価値観にもよりますね。例えば、FF紹介者にして評論家の安田均社長は、新規のアイデアを高く評価する一方、二番煎じや同工異曲の作品を若干辛めに書く傾向があります。もちろん、海外の雑誌による評論の影響もあるのでしょうが、例えば「恐怖の神殿」については、さらりと「いつものリビングストンっぽい懐かしさ」と流す程度。まあ、同記事はアメリカのジャクソンの影響で13巻「フリーウェイの戦士」の方に尺を使って、「恐怖の神殿」は大体いつもの、で片付けた感があります』

 

リサ「いつもの、ではないのか?」

 

リバT『実は、リビングストン作品にしては、システムに大きな改変がありますよ。序盤で、ヤズトロモさんが主人公に魔法を教えてくれます。つまり、リビングストン作品史上初めて、魔法剣士な主人公です。リサさんの次回作は、本当の意味で魔女剣士になれますよ。10種類の魔法のうち、4種類を選んで、ソーサリーみたいな体力消費システムで使えます。その意味で、「恐怖の神殿」もまたリビングストンさんの画期的な作品と考えていいです。もちろん、FFシリーズで魔法を初採用したイギリスのジャクソンさんと、8巻「サソリ沼の迷路」で独自の魔法ルールを披露したアメリカのジャクソンさんに次いで、3番めになりますからシリーズ全体で画期的というほどではないですけど、作家個人の作風に注目するなら、それを語ることは重要だと考えます』

 

リサ「『恐怖の神殿』かあ。プレイするのが楽しみだ」

 

リバT『実は、パラグラフ解析は現在進行中なんですよ。やり始めると結構、面白い作品ですので。解析するだけなら、3日あればできます。まあ、物語的な攻略記事にするには、時間がかかりますがね』

 

アス・ラル「問題は、『恐怖の神殿』がFFコレクションにいつ採用されるか、だな」

 

リサ「『運命の森』みたいに、コレクション収録が発表される前に、先行攻略記事にする手はある。が、そうするにしても、本作の後は少し休ませて欲しい」

 

リバT『死の呪いから解放されて、すぐにまた死の呪いに襲われるのは勘弁してもらいたいでしょうからね』

 

リサ「そっちにも、死の呪いが付きまとうのか」

 

リバT『あと、もう一つの問題があって、攻略途中にブラックサンドに行く必要があります』

 

リサ「ゲッ」

 

リバT『アズール卿は登場しないのですけど、リサさんの心情的にブラックサンドに行くには相当、覚悟を要する問題なのでは、と』

 

リサ「確かに。未来の幻視がいろいろと見えて、困惑している状態だ」

 

 

謎の声『生死の境に立たされたとき、人の意識は時を越え、過去や未来を視認することもあるという。汝もそういう境地にいるのでは? 運命神ロガーンに導かれし娘、リサ・パンツァよ』

 

 不死鳥の印が刻まれた一枚岩の先に続く石段を登った先、松明の薄明かりに照らされた洞穴の奥に、その男は腰を下ろしていた。

 ローブ姿の矮躯は恐ろしいほどねじくれているが、顔は見えない。なぜなら、風変わりな仮面をつけていたからだ。

 あたしを見つめる仮面は一つではない。部屋の壁の地肌には、多くの仮面や木彫りの彫刻が並べられており、物は言わずとも、意識あるもののような目で、あたしを睥睨していた。

 謎めいた人物は、あたしの名前を読んだあと、返事を待つかのように沈黙する。

 伝説に聞いた人物に見つめられて、あたしの心臓は早鐘を打ち、口を開こうとすると、さらに激しく鼓動した。

 

「もしかして……」あたしはおずおずと恋する乙女のように、うわずりながら口を開いた。「あなたがあの噂に聞く……ええと……」間違っていたら、どうしようかと思いながら、勇気を奮い起こして、聞いてみた。「あの、謎かけ盗賊さま?」

 

 沈黙は続いた。

 

 やがて、男は無表情ながら(仮面なんだから当然だ)、苦笑まじりの口調で答えた。「あいにく、わたしはロガーンの使いではない。来るところを間違えたようだな。去るがいい」

 

「ああ、ちょっと待って下さい。癒し手ペン・ティ・コーラ老師様。あたしを見捨てないで〜」あたしは、つまらない冗談を口にしたことを死にそうになるぐらい後悔して(じっさいに死にそうなんだけど)、仮面の男にすがった。

 だって、あたしにとって、仮面を着けた謎の男って、昔から謎かけ盗賊さましかいないでしょ、と心の中で言い訳しながら。

 

「ロガーン信者は、些細なことでも冗句をやめないと聞くが、まさか死が間際に迫っている状況でも、そうだとはな」

「話に聞いた癒し手さんが、仮面を付けているとは聞いていなかったもので」あたしは、しおらしく弁解する。

「一人のときは、仮面を外す。しかし、客の前では仮面をつける。わたしの素顔はかつて死の呪いを打ち破った際に、副作用で醜く歪み、人に嫌悪感を抱かせるからな。素顔を見せぬことが礼儀と受け止めて欲しい」

 あたしは、神妙にうなずいた。別に恋人を求めに来たわけじゃない。癒しを求めに来たのだ。顔はどうだっていい。ただ、仮面をつけた男性には……その神秘的な佇まいにはドキドキした。

 シャリーラと違って、リサ・パンツァはたぶんイケメンが好きってわけではない。神秘的な雰囲気や、文明から離れた自由人っぽい気質が好きなのだ。そう、冒険と同じで、ワクワクさせてくれる、型にハマり過ぎないミステリアスな男性が。

 父もそうだし、謎かけ盗賊さまもそう。

 たぶん、赤ツバメことレッドスウィフトさんも、呪いの共有者という意識とか寂しさだけでなく、人間とは違う異種族のミステリアスさに惹かれたのかもしれない。

 その意味で、この癒し手、ペン・ティ・コーラさんも身にまとう雰囲気が、あたし好みと言えた。

 だけど、別に誘惑したいわけじゃない。あたしが縛りつけられる種類の男性でないことは分かっている。

 ただ……癒やしてはもらわないと。

 

 だから、余計な手練手管には委ねずに、ただ正直に打ち明けた。

「お手数をおかけしますが、あたしにかけられた死の呪い、解呪していただけませんか?」

 

「それだけでいいのか?」老師ペンは威厳を漂わせる、かすれ声で尋ねた。「汝の中には、邪悪な魔女の魂も宿っておるのが分かる。死の呪いをかけた元凶、それも共に祓う必要があるのではないか?」

 

リバT『さあ、ここでゲームブックにはない選択肢です。リサさんの中にあるシャリーラを完全に祓うか、それとも留めるかは、プレイヤーのクイーンの判断に任せます。どちらを選んでも、癒し手さんは応じてくれます。ただし、その理由について、きちんと彼を説得するという前提で。何も説得力がなければ、死の呪いとともにシャリーラも消失するものとします』

 

リサ「結論は決まっている。あたしはシャリーラだ。今さら、分裂したいとは思わない。ただ、あたしがシャリーラの影響を受けているのと同様に、シャリーラもあたしから影響を受けて、ただ邪悪なだけの〈雪の女王〉から変質しているはずだ。ただ、それでも死の神の影響が彼女につきまとう。あたしの中のシャリーラを死の神の呪縛から切り離したい。そのうえで、シャリーラをあたしの中に留めることはできますか?」

 

リバT『「なかなか、難しいことを要求しおる」と癒し手さんは言います。「悪は悪として滅ぼすのが善の勢力に与する者として当然だが、ロガーンは中立だったよな。悪の魔女を善に転向させようというつもりか?」と真意を尋ねますよ』

 

リサ「う〜ん、善とか悪とか別にそういうのじゃなくて、あたしが気に入ったかどうか、いっしょにいて楽しめるかどうか、気持ちが通じ合えるかどうかだと思う。確かに、シャリーラは悪いこともいっぱいしたかもしれないけど、それは氷の魔神や死の神に縛られてしまったからで、それらから解放されて、あたしに縛りつけたら、しっかり反省して、あたしの冒険を助けてくれると思うんだよね。あたしは善じゃないけど、ヤズトロモさんたち善の魔術師さんの助けになりたいし、英雄だって目指している。アランシアの平和を脅かす悪い奴が出て来たら、あたしがやっつけたい。そのための力の一翼にもなるんじゃないかな、あたしの中のシャリーラが」

 

リバT『「いいだろう。毒を以て毒を制す、という言葉に通じるものかもしれぬ。元来、毒と薬は表裏一体だし、処方の仕方や加減によって、薬とて毒に変わる。逆もまた然り。ならば、汝と汝に憑いた魔女の霊をともに死の呪いの影響から切り離す儀式を敢行しよう。ただし……通常の倍の負担が伴うぞ」と癒し手さんは警告します』

 

リサ「倍とは?」

 

リバT『通常なら、儀式の最初に〈生命の仮面〉を装着して、体を蝕む死の呪いと戦わせるのですが、その際にサイコロ1個分のダメージを受けます。しかし、シャリーラも守るには、サイコロ2個分のダメージを受けますね』

 

リサ「ちょっと待って。今のリサの体力が12点だから……」

 

リバT『6ゾロを出せばゲームオーバーですね』

 

リサ「36分の1でデッドエンドか〜。(少し考えて)ロガーン様がリサに面白い冒険を続けさせたいなら、ここで6ゾロを出すようなことをしないって信じよう。サイコロ2個に挑戦します」

 

 運命のダイスが、転がった。その結果は……

リサ「7点ダメージを受けて、残り体力5点。だけど、リサはシャリーラを守り通したよ」

 

シャリーラ(そなたはバカか? 下手をしたら、あたしもろとも命を落とすところだったんだぞ)

 

リサ「だって、あたしはリサであり、シャリーラであり、一つになったんでしょ? だったら、生きるも死ぬもいっしょだよ」

 

シャリーラ(……涙、流していいか? これが愛のために流す涙だと学べたゆえに)

 

 〈生命の仮面〉に覆われたあたしの瞳で、生命の煌めきである涙が溢れかえったのを感じた。

 

儀式の完成

 

 その後も儀式は粛々と続けられた。

 死に誘う深い穴の上の丸太を渡る儀式は、ロウソクと火口箱で明かりを灯すことで難なく達成できた(アイテムがあれば、2Dで技術点12以下を出せば成功。なければ、2点ペナルティーで10以下を出さなければならず、失敗=即死確率12分の1)。

 

 次の儀式はドラゴンの卵が必要だった。ドラゴンの卵なんて、普通はなかなか手に入らないものだけど、運良くロガーン様の導きで、あたしは手に入れていた。元はと言えば、シャリーラが何かの魔法実験用に入手して倉庫に入れていたのを、あたしが失敬したものだ。

 シャリーラの物はあたしの物だから、これは泥棒じゃない。

 ドラゴンの卵でペン老師は何かの調合薬を作ってくれた。

 卵料理なら美味しく食べて体力回復できたのだろうけど、これはそのための薬じゃない(空きっ腹には残念だけど)。

 薬の目的は、死に誘う魔女の亡霊バンシーのもたらす恐怖の金切り声に抵抗力をつけるため(薬を飲めば、2Dで技術点12以下を出せば成功。薬が作れなければ、2点ペナルティーで10以下を出さなければならず、失敗=バンシーとの戦闘に)。

 バンシー(技12、体12)は最も怖くて醜い魔女の姿(もしかして鼻輪で牙を剥き出しにしたシャリーラかも?)で襲いかかってくるけど、しょせんは幻なので心を強く持てば相手する必要ない、とペン老師は言っていた。

 もしも、金切り声で冷静さを崩されていたら、バンシーを無視できずに術中にハマって、幻の亡霊の餌食になっていたかもしれない。あたしは弱っていて、白竜やペギラマンに匹敵するほど手強いバンシーを倒せた自信はない。

 だけど、最強モンスターの類でも、ドラゴンの卵を飲んだあたしの豪胆さの前では、しょせん幻に過ぎない。

 死の神の誘惑が形をとったかのような醜い魔女の亡霊は、あたしとシャリーラを仲間に引き込むことなく消え去った。

 

 最後の儀式のために、〈火吹山〉へ一人で行くように、ペン老師は言った。

「〈火吹山〉って、あの〈火吹山〉?」あたしは驚いて尋ねた。ストーンブリッジへの旅の途中で、東の方に見かけた不気味な高山。

 この月岩山地からは北やや西になるのかな。今から歩いて行くのは、体力が保ちそうにない。

「いや、大丈夫。一時的に、死の呪いは進行を封じてある。あとは〈火吹山〉の魔力ある頂に腰を下ろし、東の空から太陽が昇るのを待て。〈太陽の仮面〉が陽光パワーを吸収したとき、闇とは異なる不死の力が汝を満たすであろう」

 闇とは異なる不死って何?

「その答えは、わたしが仕掛けた謎だ。汝はすでに答えを知っているはず」

 あたしが知ってる不死は吸血鬼しかないのだけど、闇じゃないのなら……って、それよりも〈火吹山〉まで、ここから歩いて行くのって、やっぱり大変よ。

 

 

リバT『ということで、ここで銀のアイテムがあれば、癒し手さんがペガサスを召喚してくれるんですね。なければ、歩いて行け、と』

 

リサ「銀のフルートか、銀の矢尻ってところね。バーバリアンを倒して、矢尻を手に入れたから、ペガサス召喚の条件はバッチリよ」

 

アス・ラル「歩いて行くのって、どれだけキツいんだ?」

 

リバT『道中で、技6、体7の雑魚ホブゴブリン1体と戦闘したあと、山に登る際に、1回運だめしに成功すれば、山頂に到達できます。意外に簡単なんですね。ただし、運だめしに失敗すれば、登攀途中の転落事故でめでたく死亡ですが』

 

リサ「どうせなら、優雅な空の旅で〈火吹山〉に舞い降りる方が絵的に美しい」

 

アス・ラル「銀のフルートがあれば、横笛で天馬召喚というのがライオン丸みたいで格好いいしな」

 

リサ「横笛と天馬というキーワードだけで、アランシアと関係ない世界観を持ち込んで雰囲気崩したアストを小突きつつ、あたしは癒し手さんに銀の矢尻を渡します。これがあれば、〈火吹山〉までの直行便が使えるって聞いたんだけど?」

 

リバT『誰に聞いたというツッコミは今さらなので、気にせずに美麗なペガサスの絵とゲームブック本文(328)で説明を省略します』

リサ「ということで、ペガサスに乗って、あたしは〈火吹山〉の山頂に無事に到着した。夜明けまではまだ時間があるので、一休みと思って腰を下ろそう。思い返せば、いろいろあった、と今回の冒険をあれこれ振り返ってみたり」

 

リバT『〈火吹山〉の山頂を覆う赤い草は甘い匂いを発して、リサさんを眠りの世界に誘惑します。それもそのはず、〈眠り草〉の上に腰を下ろしていたのですから。いつしか深い眠りに就いていたリサさんは、夢の中で楽しく時を過ごします。幼少期の母さんとの思い出、ヤズトロモさんから聞かされた冒険物語の数々、成長してからブラックサンドで味わった刺激的な日々、迷宮探検競技でスロムと協力したり、キレイな宝石を手に入れて目を輝かせたり、迷宮を脱出した際に、ファングの街のみんなが歓呼の声で迎えてくれたり……』

 

リサ「もしかして、楽しそうなところだけ抽出されている?」

 

リバT『ええ。冒険の大変な部分はカットされて、良いとこどりです。そして、今回の旅では、とりわけエルフとドワーフの3人旅の部分がクローズアップされていますね』

 

リサ「うん。このままずっと眠り続けるのも幸せかも……と感じていると?」

 

リバT『すると、赤ツバメさんの声がリサさんに目覚めるように聞こえますよ』

 

リサ「え? 赤ツバメさん? 死んだはずでは? あ、夢だからいいのか、とぼんやり感じています」

 

リバT『しかし、そろそろ夜明けです。夜明けの光を〈太陽の仮面〉で受け止めなければ、リサさんは2度と目覚めないことでしょう。リサさんの夢の中に、2つの空飛ぶ幻獣の姿が浮かび上がります。一つは、炎の中から飛び出す美しい翼を持った赤い鳥フェニックス。もう一つは、闇の中から飛び出てきたような獰猛な猛禽類の顔と翼、前肢と猛々しい獣の胴体を持つグリフォン。あなたはどちらに手を伸ばしますか?』

 

リサ「ペガサス、ドラゴンと来れば、次はフェニックスを選び取るのが聖闘士の道だよね」

 

リバT『リサさんは別に聖闘士とは関係ないですけどね。それは「トカゲ王の島」のネタです』

 

リサ「一方、たまたま偶然かも知れないけど、グリフォンって冥王(死の神)ハーデスに仕える冥闘士なんだってね。つまり、聖闘士の世界でもグリフォンは死の象徴になるんだ。うちのアランシアは聖闘士の世界(もう公式に終わったらしいけど)とつながっているのは明らかなので、とにかくフェニックスが光と不死の象徴。グリフォンが闇と破壊の象徴という解釈で問題ないな」

 

リバT『否定する理由はありません』

 

リサ「だったら、当然、フェニックスを選ぶ。これでグッドエンドのパラグラフ400番だ。当リプレイ完」

 

リバT『ただし、パラグラフ400番をそのまま読むと、矛盾が発生するんですよ。例えば、「邪悪な〈雪の魔女〉の霊は滅ぼされ」とか、「あの陽気な老ドワーフにもう一度会いたくなり」とかは、本リプレイの話の流れでは修正すべきところです』

 

リサ「シャリーラの霊とは共存エンドを選択したし、スタッブ君には2度と会えない未来を分かっている。そのうえで、ストーンブリッジのハンマーの件の後日譚はきちんと描いておきたいな」

 

リバT『次回作への引きにもするために、ですね。FF14巻「恐怖の神殿」は、ストーンブリッジの客人となってくつろいでいる主人公たちのところに、ヤズトロモさんが新たな敵の出現を知らせに来るところから冒険が始まりますし』

 

アス・ラル「ヤズトロモさんがアランシア世界を守る善の魔法使いの1人としてレギュラー化するのは、そこからだもんな。あとは26巻『甦る妖術使い』に続いて、そこから急に66巻『危難の港』でヤズトロモさん久しぶりって感覚になる」

 

リサ「開いてる巻のヤズトロモさんの動向も気になるけど、とりあえず今の物語を終わらせよう」

 

エピローグ

 

 癒し手さんの象徴である不死鳥フェニックスに夢の中で導かれ、あたしは眠りの世界から目覚めた。

 もちろん、現実にフェニックスの姿は見えない。夜明け前の薄明がぼんやりと分かる程度だ。

 あたしを目覚めさせたのは夢の鳥。

 そして現実でも鳥のさえずりが聞こえたような気がした。こんな高空を飛んでいる鳥の知識は、あたしもシャリーラも持っておらず、それよりも慌てて思いついたことがあった。

 〈太陽の仮面〉で夜明けの光を受け止めないと。

(爆発する芸術ってところかしらね)癒し手さんの風変わりなデザインの仮面を見つめると、心の中でシャリーラが得心したように呟いた。

 シャリーラの知識は身に付いていても、芸術的センスとか好きな男の性質とか、感覚的なものにはまだズレがある。というか、魂の距離が近づいたために、そういう微細な違いを気にするようになったのだろうか。

 元より、違うセンスの人間同士が一つになると言っても、どこかで違和感や差異は生じるものだろう。同じ経験をしても、同じ本を読んでも、個々人で受け止め方は変わるものだ。

 とにかく、癒し手さんの仮面のセンスは、ミステリアスを通り越した不気味さで少々いただけない。

 同じ仮面でも、謎かけ盗賊さまの方が洒落っ気が利いていて、いかにも怪人って感じで格好いい。

 癒し手さんのは、南洋の妖怪とか魔物って感じで、土俗的な分、スタイリッシュとは程遠い。

 う〜ん、一口に仮面といっても、この世界も奥が深そうだ。

(早く仮面をかぶりなさいよ。太陽が昇って来ちゃうわよ)

 シャリーラがお姉さんぶって、あたしを急かす。死の神の呪縛から解放してあげると、急に生きることに積極的というか、貪欲になった感じで、現金なものだと思った。

 何にせよ、シャリーラの言い分は正しい。あたしの方があれこれ考えすぎて、行動がワンテンポ遅れがちになった。知識を持て余している感。

 とにかく、あたしは〈太陽の仮面〉をかぶった。太陽仮面グランタンカ、と神さまの名前を英雄っぽく心で名乗ったりしながら。

 

 地平線に赤い光が出現し、眩き陽光があたしたち、リサとシャリーラの共有する一身を黄金のシャワーのように包み込んだ。

 体内に充満した冥い息吹がシューッと溶けるように抜ける感じがして、あたしたちは〈死の呪い(デススペル)〉から完全に解放されたのだと知った。

 消耗した体力さえもがすっきり回復し、空腹さえも今は感じない。

 まるで植物が陽の光を浴びて、自ら栄養を作り出しているような充実感を覚えたりもした。

 全身に活力が甦る。

 今だと、トロールを一度に3体ばかり相手どっても勝てる気がする。

 

 人生で最も清々しく、楽しく、美しい一日になる予感。

 邪悪な〈雪の魔女〉は悪霊から守護霊に転化され、恐るべき呪いも打ち砕かれた。

 空飛ぶ鳥の声が改めて耳に届いた。

 上空を見ると、陽光に照らされた一羽の鳥が翼を赤く染めているかのように、舞い降りて来た。

 もちろん、不死鳥とは違う。

 だけど、それもまた一つの不死の象徴だとあたしは悟った。

 永劫輪廻。

 自然の中で死んだ健全な魂が、自然の中で生まれ変わる。

 あたしの目の前に舞い降りたその鳥は、珍しく本当に赤い羽毛をしていた。

 そのつぶらな、だけどどこか人懐っこい知性を感じさせる瞳は、はっきり彼のことを思い出させた。

「お帰り、赤ツバメさん」

 あたしはそっと、その空の使いに手を差し伸べた。

 鳥の言葉が分かればいいのに。

 そう思ってから、はっきり決意する。

 ヤズトロモさんなら森の獣や鳥とお喋りできる。そういう魔法を学べばいいんだって。

 

 こうして、あたし、リサ・パンツァは魔剣士から魔女剣士への道に踏み出した。

 

(『雪の魔女の洞窟 リサ・パンツァの冒険譚2』これにて終了。

 次回は、攻略EX記事と、小説風の後日譚を追記予定)


Viewing all articles
Browse latest Browse all 69

Trending Articles