東への旅
リモートNOVA『前回は、火吹山の秘密宝物庫に封印されていた巨人4体を、ドワーフの手で誤って復活させてしまったので、尻拭いのための旅を始めたところまでを語った』
アスト「ドワーフのせいにしているけど、秘密宝物庫の地図を見つけた事件の元凶はお前だからな。自分で付けた火を自分で消そうとしているだけなのを忘れるなよ」
NOVA『そうなんだよな。今回のストーリーは、うっかり危険な存在の封印を解いてしまったのを何とか収拾つけるための冒険なんだよな。まあ、これで俺が脇役なら、「巨人!? アワワワワ。俺には手に負えねえ。こうなったらズラかるぜ。アランシアの平和? そんなの一介の遺跡荒らしの知ったことか」と無責任に後の始末は他の勇者に丸投げするところだが、英雄は君だ! なゲームだから、しでかした過ちの責任はとらないとな』
ダイアンナ「で、西へ向かった巨人を止めるための手段を探しに、東へ向かうわけだね」
NOVA『言っておくが、逃げてるんじゃないんだからな。まあ、西は大惨事が予想されるが、東はごくごく平和だから、空気が全然違うんだけどな。世界の危機はまだ始まったばかりで、被害が拡大する前に何とかケリをつけようって気持ちになっている』
アスト「今回はパラグラフ58番からスタートだったな」
NOVA『川沿いの道を辿って行くと、野菜畑のある丸太小屋に行き着いた。鞍のついた馬が2頭、つながれているのが見える』
アスト「馬キター。よし、今からオレは馬だ。なになに、世界の危機だと? よし、オレに乗って行きな。こう見えてもオレは勇者の馬として、何度も世界の危機を救って来た。人呼んで、パトリシアという」
ダイアンナ「パトリシアって名前は女性名じゃないのか?」
アスト「おっと。ならば、男性名に直して、パトリック、またはパトリキウスと言ったところか」
NOVA『ドラクエの馬の名前は、確かにパトリシア、ファルシオン、ミーティアといった系譜があるが、フォーティは馬の言葉が分かる技能を持っていないので、妙に馴れ馴れしい馬がヒヒーンといなないているようにしか聞こえない』
アスト「ヒヒーン(勇者なら馬の言葉ぐらい分かるようにしておけよな。さもないと、いいモンスター使いにもなれないぞ)」
NOVA『まあ、伝説のポケモンマスターは、ピーピカピカチューって鳴くだけの電気ネズミと心を通じ合わせるらしいからな。今はブンブン言って巨大ロボになっているが、ポケモンをゲットする前は、地球戦隊のサポートロボだったり、絶対無敵のロボ操縦者だったり、伝説の勇者の隊長だったり、いろいろつながって来るが、とりあえず馬と喋る前に主人と交渉するのが優先だ』
ダイアンナ「小屋をスルーして、歩き続けるルートは?」
NOVA『後でIFルートとしてチェックする。今は馬を借りるために、主人と交渉する』
馬の主人ハロルド・ホゲット
NOVA『おおい、主人はいるか? 世界の危機だ。馬を貸してくれ、と扉をノックするぞ』
ダイアンナ「いきなり、そんなぶっちゃけ方をするか? ただの怪しい来訪者だろう?」
NOVA『時間がない。フォーティは正直者で、単刀直入に切り込むのが流儀だ。で、小屋の中からは「立ち去れ! さもないと犬をけしかけてやる」と怒った男の声とともに、激しく犬の吠える声が聞こえてきた。これで俺が小心者なら黙って立ち去るところだが、売られたケンカは買わねば収まらない性質なものでな』
アスト「いや、どうしてケンカになるんだよ。主人と話し合えよ、とウマ語でいななく。ヒヒヒン、ヒヒヒン、ヒヒヒのヒン」
NOVA『馬の声に負けないよう、ノックの音をますます大きくする。すると、小屋の主人は「聞こえないのか! 立ち去れと言ったろう! 犬をけしかけるぞ!」とますますケンカ腰だ。こちらも負けじと怒鳴る。「世界の危機だと言ってるだろうが! 大人しく出て来て、俺に馬をよこせ! 金ならある!」と訴える。すると、険しい顔の男が二頭の軍用犬を傍らに引き連れ、扉を開けた』
ダイアンナ「バトルか?」
NOVA『その覚悟はあるが、フォーティも、小屋の主人も相手の姿形をじろじろ見て、互いの血の気の多さを認めたようだ。一通りのガンの付け合いが終わると、主人は「馬が欲しいなら最初からそう言え。オレはハロルド・ホゲット。こいつらはチューリアとジョージ。いつでも、お前をかみ殺すことができるが、話ぐらいは聞こう。オレの馬でどこへ向かうつもりだ?」と尋ねてくる』
フォーティ『俺はフォーティ。旅の冒険者にして、遺跡の探索や、魔の物を狩ったりするのが仕事だ。つい先程も、火吹山から迷い出て来た人ネズミを斬ったりした』
ハロルド『そんな話は聞いていない。どこへ向かうつもりだと聞いたんだ。耳が悪いのか? それとも、人の話が理解できないほど頭でも悪いのか?』
フォーティ『いちいち突っかかるオッサンだな。自己紹介されたから、自己紹介で応じるのも礼儀だろう? とにかく、世界を救いに行く旅だ。目的地はハーメリン。そこにマリク・オム=ヤシュという男がいると聞いてな。世界を救うには、彼の助力が必要らしい』
ハロルド『ハーメリンの……マリク・オム=ヤシュか。あそこは曲者ぞろいの町だが、お前さんのようなごろつきには似合いかもな。マリクは、そんな中でマシな部類だろうが、若いときはオレと連れ立って荒事もいっぱいやって来たものだ。世界の危機とか言ったが、どういうことだ? 平和な世界を脅かすような連中がまた出て来たか? 火吹山のザゴール? 悪名高いバルサス? それとも雪の魔女か、ザンバー・ボーンか、トカゲ王か、マルボルダス? オレも若いときはアランシア各地のいろいろな邪悪の噂は聞いたが、しばらくは大それた冒険ともご無沙汰だ。お前さんは一体、何と戦うってんだ?』
フォーティ『ずいぶんと他人の冒険に入れ込むじゃないか。あんたも昔は冒険者だってのか? 先輩とでも呼べばいいのか?』
ハロルド『理由も分からずに、他人の冒険に友を巻き込ませたくはないって話だ。人の助力を求めるなら、隠し事なしに必要なことは正直に話せ』
フォーティ『さっきから正直に話してるだろう!? 火吹山を探索していたら、うっかり連れのドワーフがザゴールの遺品に仕掛けられた魔法を発動させてしまってな。巨大なゴーレムが4体動き出して、周囲を破壊しながら行進し続けている。俺はヒグリーってドワーフの遺言に従って、巨人を止める方法を知っているというマリクさんに知恵を借りたいんだ』
ハロルド『ドワーフのヒグリーだと? 遺言ってことは死んだのか?』
フォーティ『ああ、残念ながらな。知り合いか?』
ハロルド『火山島で、オレやマリクと共にトカゲ王の軍と戦った戦友の一人だ。故郷のストーンブリッジで鉱夫として生きるって聞いたが、今ごろザゴールの魔法なんかに引っ掛かるとはな。ヒグリーの遺言だったら、お前さん……フォーティと言ったか。オレにとっても他人事じゃない。馬ならただで一頭、譲ってやる。世界を救う旅ってのを果たしてみせろよ』
フォーティ『もちろん、そのつもりだ。……ところで、あんたは付いて来てくれないのか? マリクさんの知り合いだったら、付き合ってくれると心強い』
ハロルド『オレは……年をとったからな。冒険や旅には、もう付き合えん。畑や馬や犬の面倒も見ないといけないしな。マリクなら、オレよりも立派な男だったから協力もしてくれるだろうが、妻のヴェルマに先立たれてからは隠遁生活に入って世捨て人同様の生活をしているとも聞く。だが、義兄弟のオレの証である〈ドラゴンの顔のメダル〉さえ見せれば、お前さんも信用してもらえるはず。これを持って行って、ハロルド・ホゲットから預かったと言えば、上手く行くだろう』
フォーティは〈ドラゴンの顔のメダル〉を手に入れた。
ハロルド『ハーメリンは明日から祭が開かれると聞く。マリクに敬意を表するなら、ハーメリンの外の墓地を訪れた方がいい。そこに、あいつの妻が眠っているんだ。祭りの日なら、マリクも少しは開放的な気分になれる。ただし、町には詐欺師もいろいろいるから気をつけろよ。とりわけ、カードのいかさま師にはな。金が気づかない間に奪われて行く』
(未完)