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作者NOVAの気まぐれゲームブック日記(オオカミ男編)

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非プレイながらの読書話

 

 前回の記事から1週間を経て、『サソリ沼』の方はまだ進めず。

 当然、『王子の対決』の完全解析に力を入れているからですが、そろそろゴールが見えたかな、という頃合い。

 で、この時期は割と注意力散漫になりがちで、理由は花粉症とか、季節の変わり目で仕事の切り替わりも含めて、目移りがしやすく、加えて今年は3月に入っての急な冷え込みで、いつもと異なる体調の崩れ方をした。

 ちょっとした風邪ですな。寒暖差に体が付いて行かなかったために、3月4日辺りから咳が出て、こじらさないために自重して、週末までには何とか回復。

 当然、そういう状況なので難しいことは何も考えられず、ゲームブックを楽しんでプレイする気持ちにもなれず、でも『王子の対決』のフローチャートや解析なんかはノートに仕上がっているので、後はブログ記事として、コツコツ書きつづるのみ。それでも、想定よりもスローペースだなあと思いながら、ダラダラ苦行に近い状態になって来たり。

 で、寄り道的にAI絵を描かせてみたり、気分転換を試みたり、この一週間は自分の心理的にあれこれ迷走したり、瞑想したりもしながら、ふと気まぐれな思いつきで、この作品に触れてみた。

 FFコレクション5の新作の一冊です。

 先に『サソリ沼の迷路』の攻略記事を書く、と先週末に宣言したから、この作品は後回しだと思ってましたが、何だか夜中にふと目が覚めて、熱に浮かされたのか雄叫びをあげる……ことは近所迷惑なのでしませんが(苦笑)、自分が獣憑き病(ライカンスローピー)に冒されたような気分(妄想)に苛まれるわけですよ。

 でも、その夜は興奮状態を無理に抑えつけて寝て(元気なら、衝動的に読書してる)、少し落ち着いた2日後ぐらいに、読み始めました。

 

 感覚としては、この記事を書いたときと同じような気分ですね。

 要は、『ゲームとしてプレイする気力はなくても、ブックとして読むことぐらいはできるよね』という奴である。

 せっかく買ったのに、何ヶ月以上も放置したままなんて、新作さまに申し訳が立たねえ。

 大体、戦隊新番組のゴジュウジャーでは、狼男主人公の遠野吠がはぐれ者のナンバーワンなんて言っている状況で、せっかく出たオオカミ男ゲームブックだぜ。

 今が旬だってのに、このままってんじゃ、時代に取り残されちまう。

 それとも何か? お前のゲームブック愛はその程度か? オオカミ男になって、殺人大パーティーを繰り広げたり、怪物料理の名コックになるのがお前の夢じゃないのか? 今なら、それが実現できるんだぜ……と内なる獣が囁く声が聞こえてくる。

 

 ……ええい、去れ、悪霊よ!

 俺はショッカーの改造人間になりたいわけでも、怪物くんの従者の一人としてウォーでガンス、と言いたいわけでもない。そんな夢を持った覚えは一切ない。

 しかし、まあ、少しぐらい読むだけなら、罰は当たらんかもな。

 そう、読むだけで、プレイしてないなら、次は『サソリ沼』と言った公約違反にもなるまい。

 うん、少し読んだだけだからねって記事である、今回は。

 

キャラ作りのルールが少し違う

 

 キャラは作らないけど、ルールは読む。

 だって、初のジョナサン・グリーンのゲームブックだからね。もしかして、ルールが違っているかもしれない。

 普段は、1D+6点で技術点を決めるところを、もしかしたらオオカミ男に変身すると、技術点が2点アップするかもしれない。ルールはしっかりチェックしないと。

 

 で、チェックした。

 確かに、いつもと能力値の決め方が違った。

 技術点は、サイコロ1個を振って、2で割って(端数切り上げ)、それに7を足す。つまり、1D+6点ではなく、1D/2+7点である。

 結局どういうことだってばよ?

 1Dの半分は1〜3点で、それに7を足すから、技術点は8〜10点である。いつもなら7〜12点のところを、今回は弱体化してやがる。技術点12だから、判定は絶対に失敗しないぜって余裕をかますことができない。

 期待のオオカミ男くんは、思ったよりザコだったというルールの壁に突き当たったのである。

 

 いや、オオカミ男がテクニシャンとは限らないじゃないか。技には劣っていても、野生のパワーで体力点が上乗せされているかもしれない。ザコと決めつけるのは早計だ。

 そう考え直して、体力点のルールを読む。普段は2D+12で決めるんだよな。今回は2Dの代わりに3Dを使うか、あるいは固定値が14とか15に強化されていれば、さすがはオオカミ男でがんす、と坊ちゃんのためにエンヤコリャできるかもしれない(ネタが古くてすまん。まあ、80年代にFFにハマった世代なら、たぶん分かるでしょう)。

 で、じっさいのところは……2D+10。固定値が2下がってやがる。体力点は12〜22点。いつもなら19点とか20点が期待値のところを、17点か18点になってる。

 オオカミ男は思ったよりも虚弱体質だった。シクシク。

 

 技にも劣り、体力も欠けていて、どこかのメスガキにや〜いザーコザーコと嘲られても、クッと屈辱を噛みしめることしかできないマゾオス街道を突き進むのが、オオカミ男だというのか。

 こうなったら90年代にレンタルビデオで借りて好きだった映画『ウルフ』にちなんで、強かなオオカミ女に性転換するか?

 いやあ、無印『ハウリング』のラストと言い、『ウルフ』のミシェル・ファイファーと言い、ヒロインがラストで獣人化するエンディングは味わいがあっていいですな。

 オトコはオオカミ、と言われた70年代の昭和時代から一転、オトコは草食系と揶揄され、肉食系女子が優勢となる平成時代から21世紀。まあ、女優のミシェル・ファイファーさんは『レディホーク』(1985)で鷹になったり、『バットマン・リターンズ』(1992)でキャットウーマンになったり、『ウルフ』(1994)でオオカミ女になる前から、いろいろ変身ヒロインをやり続け、近年も『アントマン』の映画で先代ワスプ(ハチ女)として活躍しているという。

 って、現実逃避の蘊蓄寄り道はこれぐらいにして、ええと、本作主人公のオオカミ男くんが普段のFFよりもデータ的に弱くて残念だって話ですな。

 これで運点まで低いとなったら、不幸街道を突き進むってものですが、幸い、それだけは1D+6でいつも通り。

 技も力も劣っていても、運が悪くなければ希望は持てるかな。

 

 そして、本作特有の能力値が変化点。へんかじゃなくて、へんげてんと読む。

 最初はゼロ点からスタートして、序盤に人狼に噛まれたせいで3点になる。そこから治療で減少したり、呪いが進行して増加したりして、冒険中にいろいろと影響してくる。

 具体的には、2Dを振って変化点以下が出るか、それを越えるかを判定する特別ルール、変化点チェックがあって、変化点チェックに成功する(数値以下を出す)と衝動を抑えられずに吠えたり、野生の超感覚が発動したり、敵のモンスターが怯えたりする。オオカミ男ライフを楽しむためには、変化点が高い方がいい……とプレイしてない読者としては思うわけですが、主人公の目的としては呪いを取り除いて、元の人間に戻りたいから変化点は上げない方がいい。

 つまり、力と人間性のジレンマって奴ですな。

 なお、状況によっては変化点チェックに失敗する方がいいことも多々あって、退魔神官に疑われている時に、変化チェックに成功すると、『この闇の魔物め!』と正体を看破されて、厄介なことになる。

 何だか外道照身霊波光線を浴びた前世魔人みたいに、バ〜レ〜タ〜カ〜とロールプレイしたくなるシチュエーションが何度か、いや、もしかすると何度も、かもしれない。

 

 とにかく、変化点チェックに成功した方がいい場面と、失敗した方がいい場面があって、一概にどっちがいいとは言えないジレンマ付きのシステムなんですな。

 日本のTRPGで言うところの、『ダブルクロス』や『パラサイトブラッド』的と言うか、特殊能力を使うには闇の力に染まる方が強いのだけど、調子に乗って暴走すると人の世界に帰って来れなくなってNPC化するという。

 

 そんなわけで、能力値の決め方と、変化点というルールが変わっていますが、それ以外はいつものFFですな。

 戦闘中の運だめしもできますし、食料も最初から10食持っていて、1食で4点回復する。最近は、ガンドバッドの粗食に甘んじていた(『王子の対決』では1食で2点しか回復しない)ので、やはり美味しい食事が確保されているゲームは、冒険者として大変ありがたいです。

 しかし、変化点が高くなったら、人の保存食を受け付けなくなったりはしないだろうか。オオカミ人間になったら体質が変わって、血のしたたる肉を好むようになって、焼き方も生に近いレアに馴染むというのはオオカミ男映画の定番だと思うし。

 なお、体質変化で最も顕著なのが、聖水に触れるとダメージを受けるという場面。うわあ、自分は闇の魔物にどんどん近づいているんだ〜と絶望を噛みしめる主人公の心情を、ジョナサン・グリーンはよく描写してくれています。

 獣憑きというシチュエーションで、(一過性のイベントでなく)ここまで掘り下げて描いたゲームブックは、初めて経験しました。普通は、文章に書いていないことを勝手に脳内補完しながら、ロールプレイのフレーバーとして堪能してきたのを、普通にジレンマを味わう物語として描いてくれているもんなあ。

 魔の力の誘惑と、それに抗う人間性と、両面をきちんと文章表現していて、途中まで読んだだけでも、ゾクゾクワクワクさせてくれます。

 忌むべき力なれど、それに飲み込まれることへの期待感みたいなものもあって、その葛藤が素の文章で(脳内補完せずとも)味わえるのは、良きオオカミ男小説だ。

 

 ないのは、初期FFに付き物だったポーションの類ですな。

 まあ、技術点や運点が削られるシチュエーションが多くなければ、ポーションはあまり必要ないという考え方もあって、リビングストン先生の場合は、それらが頻繁に削られるから、ポーションのありがたさ(とりわけ幸運ポーション)を感じるわけで。

 本作は圧倒的に変化点チェックの機会の方が多いですし、運だめし失敗即死亡というケースが今のところ少ない。不利なめにあっても、それなりにストーリーは継続するので早急な断ち切られ方をしないという安心感はある。まあ、後々どうなるか分からないけど。

 

序盤のストーリーを触れてみる

 

 ルール話から、本筋です。

 ところはソーサリーでおなじみの〈旧世界〉ですが、逆に言えば、邦訳FFではソーサリーでしか馴染みがなかったとも言える。

 FF34巻以降でいろいろと開拓されてきた大陸で、アナランドと未開の地カーカバード、マンパン砦以外の地域は、名前だけ知っていても、具体的な冒険物語とはつながって来ない場所でした。

 まだ暗黒大陸クールの方が、邦訳作品数が多いのではないか、と思われ。

 英ジャクソン以外で〈旧世界〉の冒険物語を開拓してきたのが、キース・マーティン、スティーブン・ハンド、そしてジョナサン・グリーンの3人になりますか。多士済々な面々がいろいろ集うカオスな大陸クールと比べても、〈旧世界〉は古き良き伝統の物語(騎士団とか、ゴシックホラーとか)がよく似合う感。

 〈旧世界〉にゴシック要素を最初に投入した作家は、FF38巻『吸血鬼の城』(未訳)を書いたキース・マーティンだけど、本作もその系譜を受け継いで、D&Dのゴシックホラーサプリ『レイヴンロフト』っぽい世界観の辺境の地モーリステシア公国のルプラヴィアの地が舞台となっている。未開地カーカバードの西に位置するモーリステシアの山岳地域は、魔の系譜を宿した諸侯が君臨する群雄割拠な地帯のようで、いわゆる統一が為されていない不毛の田舎。

 なお、イギリス人にとっての田舎は、ゴシックホラーの世界観だと東欧になります。アジアとかアフリカみたいな完全に異種族みたいなところではなくて、一応は古代ローマの伝統を受け継ぎ、騎士団とかが入植してヨーロッパ文明の一角には位置するけど、洗練されていない野蛮な闇が蔓延した地。

 フェンフリィやレンドルランドの快適で安全な平原に飽きた主人公は、より危険な刺激を求めて、未開の辺境にやって来たという設定。なお、外からわざわざモーリステシアの地に行くのは、愚者か狂者ばかりと言われているそうで、まあスリルシーカーな冒険狂なんでしょうな。

 そんな豪胆かつ無鉄砲な冒険剣士の主人公すら後悔するほどの闇に覆われた地がルプラヴィアという設定。そこに行けば、一攫千金のお宝が隠されているという噂もなく、本当に何をしに行ったのか分からないほどの狂気に導かれて、自分でも『何で、こんな土地にいるんだ、俺はよ? バカか? 魔が差したとでも言うのか?』と言わんばかりの困惑ぶりを発揮して(読んでる人間がツッコミ入れたくなるほど)、目的のスリルは味わっているわけです。オオカミの群れに襲われるというホットスタートな状況から、パラグラフ1番が開始される、と。

 

 その後は、群れのリーダーとの対決で、肩口に食いつかれて窮地に陥りかけたところを、木こりの斧を持った巨漢が乱入してピンチを救ってもらいます。

 気絶した主人公が次に目覚めたときは、ヒゲ面の巨漢ウルリッヒの山小屋で傷の手当てをしてもらったという状況。

 森番ウルリッヒの親切さに感謝するも、彼が斬り落としたオオカミの前足が人間の手に変わる光景を目の当たりにして、相手がただのオオカミではなく、呪われた人狼だと理解する主人公。

 ウルリッヒは主人公の状況に同情的になって、獣憑き(ライカンスローピィ)の治療法を提案してくれます。

 一つ、呪いを与えた人狼を探して殺す。

 二つ、薬草ベラドンナを見つける。

 三つ、近くに住む賢女のゼコヴァ婆さんを訪ねる。

 

 どの選択肢を選んでも、最終的には親切なウルリッヒと涙のお別れをすることになって、呪いの元凶を突き止めるための孤独な闇への旅が開始されます。

 もう、頼れる兄貴分だったウルリッヒさんの正体とか、この呪いに満ちたルプラヴィアで旅をしながら、「闇の力に苛まれながら、闇を狩る魔狩人みたいな仕事」を重ねる道中が、いかにもダークファンタジーって感じで、格好いいです。

 しかし、選択をミスると、村人を亡霊から助けようとして、自らも魔物だと見破られて、出て行け、と追い払われたりするなど、ロンリーヒーローになったりもします。

 最近のヒーローだと、仮面ライダーガヴが序盤は人を襲う怪物を倒していたところを目撃され、自らも怪物と見なされて、悲鳴を上げられたりしながら、定住先を持たずに孤独な旅を行なっていたのに近いな、これ。

 闇の力に苛まれているから、闇の力に敏感で、正体を悟られないように人々を救おうとするダークヒーロー。これにも近いか。

 まあ、キバはオオカミ男ではなくて、吸血鬼とのハーフだけど、仮面ライダーでオオカミなのは555(ファイズ)の方か。

 他に狼テーマだと、これも捨て難い。

 そんなわけで、FFゲームブックの主人公は割と素の文章では淡白な描写が多く、感情移入はプレイヤーの想像力による補完が必要なものが多かった感じですが、このオオカミ男くんの場合は、無色透明なキャラのはずなのに、狼憑きというシチュエーションで感情移入をそそられる書き方になっているのと、文体もまた情感を刺激するような描写になっているので、思ったよりもエモい物語になっているなあ、と感じました。

 ダイスはまだ振っていませんが、パラグラフを順にチェックしながら、手癖で解析を始めた頃合いであることを表明しつつ。

 

 また話が進展したら、読書感想という形で続きの記事書きをしたく。

(当記事 完)


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