混沌迷宮は1つじゃない
リバT『それでは、久々のローグライクハーフをプレイしてみましょう。なお、今回の舞台は混沌迷宮ということですが、実はその名を冠するゲームブックも2009年に出ていたんですね』
ダイアンナ「そうなのかい。で、そのゲームブックと今回のシナリオの関係性は?」
リバT『ゲームブックは今回のシナリオの前日譚になるようですね。前回、語った《白の魔法使い》が冒険者に討ち取られるエピソードとのこと』
アスト「つまり、ゲームブックで迷宮管理者の《白の魔法使い》を倒して、めでたしめでたし、と思っていたら、平和が訪れたのも束の間、事態はますます悪化したってことか」
リバT『まあ、断片的な情報だけで推測まじりですが、ここでの物語としては、《白の魔法使い》を倒したことは決して正解ではなかった、という解釈をさせてもらいます』
カニコング「触手の飼い主を殺害したら、触手が野生化して暴れ放題ってことでごわすな」
リバT『触手を混沌と読み替えたら、その通りかもしれませんが、混沌は別に触手に限るわけではございません。中には、秩序正しい触手だっているのかもしれませんし』
カニコング「ならば、吾輩は良き触手の友でありたい」
アスト「良き触手って言われてもな。とにかく、混沌迷宮で最初は何を目標にしたらいいんだ?」
ダイアンナ「もちろん、迷宮にのさばる悪しき魔物を倒して、お宝を頂戴するのだろう? ハック&スラッシュはダンジョン探検の昔からの基本だ」
アスト「そりゃそうだが、前作では『黄昏の騎士が村を脅かしているから退治しろ』ってミッションがあったじゃないか。迷宮攻略の1周めは何を目指したらいいかって話だ」
リバT『1周めというか、1層めと言うべきですね。混沌迷宮は全部で3層構造で、1層めの目標は、同盟している黒エルフの長スネージを探して、連れ帰って欲しいと頼まれます。あと、あなたたち自身の目標は、身に宿した混沌を抑える術を見つけること。混沌の元凶を封じ込めるか、あるいは混沌を研究していた魔術師の資料でも見つけ出すか。一応、案内役従者にしてランタン持ちのランちゃん曰く、この迷宮を研究していたのは《白の魔法使い》だけでなく、鳥人の賢者マトーシュという聖人がいまして、もしも彼がまだ健在で、研究を続けていたなら助けてくれるかもしれない……と、死んだお祖母ちゃんが言っていたそうです』
アスト「つまり、今回は敵を倒すのが目的ではなくて、人か情報を探すのが目的ということだな。ミッションは了解した。では、ここからオレは盗賊剣士アートスだ」
ダイアンナ「あたしは、魔法剣士ダルタニアだね」
カニコング「触手従者にして太刀持ちタッちゃんことターコイズでごわす」
アスト「……触手従者ってのは勘弁してくれ」
今回も一本道モードで
リバT『混沌迷宮は、前回と同じ一本道モードの他に、固定マップモードというのが用意されております。ゲームマスター推奨で、1人遊びには向きませんが、普通のTRPGのような遊びができます。ただ、その地図を描くのが当記事では非常に手間なので、一本道モードで攻略することとします』
アートス「では、最初にリーダーのオレがダイスを振らせてもらおう。(コロコロ)13」
リバT『おめでとうございます。ここで目標値4の【器用ロール】に成功すると、お宝が手に入ります』
アートス「【器用ロール】は行うたびに器用点が減るんだな。通常の技量ロールでも2以上で成功するから、そっちで行うぜ。(コロコロ)出目5で難なく成功」
リバT『そこには2羽のニワトリがいました』
アートス「ニワトリだと? 何で、こんなところに?」
リバT『どこかの飼育小屋から逃げ出して来たのでしょうか? ロープがあれば、2羽まとめて1つのアイテムとして連れて行くことができます』
アートス「何の役に立つんだ?」
リバT『ニワトリの役目は2つ。1つは、罠にハマって従者が死んでしまいそうなときに、ニワトリを代わりに犠牲にできます』
ターコイズ「それは是非とも、連れて行くべきでごわす。従者の死亡事故を2回まで打ち消してくれるのは、吾輩にとって死活問題であるゆえに」
ダルタニア「そうか。従者が罠で死んだりすることもあるんだね」
アートス「まあ、オレは盗賊だから、罠を【察知】して回避すればいいだけの話なんだがな」
ターコイズ「それでも、失敗する可能性がごわそう」
アートス「その時はその時だ。覚悟を決めてくれ」
ターコイズ「覚悟よりも、ニワトリ様を触手並みに祀るでごわすぞ。天は、吾輩を生かすために、ニワトリ様をお使いに下された」
アートス「で、ニワトリのもう一つの役割は?」
リバT『ワイロで食料1食の代わりになります』
アートス「自分で料理して食べることはできないんだな」
リバT『ええ。プレイヤーキャラの食材にはなりません』
アートス「まあ、連れて行っても害になるわけじゃないなら、手持ちのロープでつないで、ニワトリを連れ歩くぜ。まさか、ロープをこんなことに使うとは思わなかったな」
こうして、4人パーティーにニワトリが2羽仲間に加わった。
2つめのイベント
ダルタニア「次は、あたしが振る番だね。(コロコロ)54はバトルだったかな」
リバT『正解です。混沌のクモが9匹出現しました。敵のレベルは4。部屋の大きさは……3が出たので、狭いです。【炎球】で一網打尽にできそうですね。敵の反応は……敵対的です』
ダルタニア「だったら、景気よく焼き滅ぼすとするか。【魔術ロール】を行うんだね。4が出たので、魔術点6を足して10だ。つまり、相手10体を撃退できるので、全滅させられたわけだ」
リバT『クモは宝を持っていませんでした。魔術点1点を減らしてくださいね』
ダルタニア「ああ。残り魔術点は5、と」
3つめのイベント
アートス「じゃあ、次はオレが……」
ターコイズ「いや、せっかくプレイヤーが参加しているのだから、吾輩にも振らせてもらえぬか?」
アートス「……変な目を出すなよ」
ターコイズ「大丈夫、任せるでごわす。(コロコロ)24はまともな出目と思うが?」
リバT『20台は、中立または友好的なクリーチャーですね。黒エルフの戦士が5人です。あなた方は部族の友好の証である「黒いスカーフ」を身につけていますので、彼らの反応は【歓待】になります。ちょっとした宴になって、生命点が1点回復しますよ』
アートス「良い結果なんだが、タイミングがな。ダメージを受けていない時に、そんなイベントが出てももったいないだけだ」
リバT『彼らは、長の行方を探しています。しかし、あなた達が手がかりを持っていないことを聞いて、がっかりします』
アートス「すまねえな。オレたちはさっき迷宮に入って来たばかりなんだ。とにかく、手分けして、スネージ族長の居場所を探そう。無事でいることを願ってな」
黒エルフ(リバT)『同盟相手がいるのは心強い。オークどもには気をつけろ』
ダルタニア「オークどもは敵なんだね。見つけたら斬ってやる」
リバT『あんた達、強そうな剣士が敵に回らなくて良かったよ、と黒エルフの小隊長はニヤリと笑みを浮かべて、その場を立ち去ります』
ターコイズ「悪いイベントではなかったろう?」
アートス「いや、回復の機会を無駄にしたという意味では、タイミングが悪い」
ターコイズ「そういう責められ方をされるのは、いささか理不尽でごわす(トホホ)」
火吹き獣のイベント
リバT『4つめはダイスを振らずに固定イベントが発生します。ここには、ゴーブの街から派遣された兵士たちがいて、混沌迷宮の調査を進めていたのですが、犠牲者が出たので、探索を断念するべきかと迷っています』
アートス「あんた達の調査をオレたちが引き継ぐというのはどうだ?」
兵士(リバT)『そいつはいい。だったら、俺たちはここでしばらく待機しているから、良い情報が手に入ったら、報告に戻って来てくれ。俺たちも手ぶらで帰りたくはないからな。その代わりと言っちゃ何だが、俺たちも情報をやろう。かくかくしかじか』
ダルタニア「かくかくしかじかって何?」
リバT『【手がかり】という名の情報です。この【手がかり】を持っていると、恩恵が2つあります。1つは、出目63の「黒エルフの狙撃手」イベントで、友好的な反応に変わります。2つは、固定マップモードでないと使えないのですが、迷宮内の隠し部屋に入ることができます。そこには宝物が置かれてあって……』
ダルタニア「お宝かい。一本道モードでも入手できるようにしないかい?」
リバT『いいですよ(あっさり)』
アートス「いいのかよ」
リバT『ルールの正しい適用ではありませんが、この【手がかり】の活用は、一つの戦闘を避けるか、お宝のゲットかのいずれかをプレイヤーが選択できるようにするという裁定です。なお、これも固定マップモード用のルールですが、迷宮の隠し部屋を見つける際に、目標値7の【器用ロール】に成功するという手もあります』
アートス「目標値7か。通常の技量ロールで行えば、出目5が必要だが、盗賊のオレなら出目2で行けるわけか」
リバT『ただし、このロールに失敗すると、1点ダメージを受けることになります。固定マップの第1層では、そういう隠し部屋が3ヶ所用意されていて、ダンジョン探索気分を味あわせてくれますね』
アートス「一本道モードでは、無理なのか?」
リバT『固定マップモードでは、隠し部屋と、通路イベントが追加されている他、同じ部屋に何度も入ることができる(再入場)という特徴があります。例えば、先ほどの黒エルフイベントで、生命点1点回復効果を、どこかでダメージを受けてから、引き返して使用することもできるでしょう』
アートス「固定マップモードの方が得なのか」
リバT『一概にそうとも言えません。通路イベントには罠も仕掛けられていますから、リスクだって相応にあるのです。何よりも固定マップの方が部屋数が10以上と多いので、全部回ろうと思えば、一本道モードよりも手間暇が掛かるのが確実か、と』
ダルタニア「だったら、隠し部屋と通路イベントと再入場は割愛か」
リバT『隠し部屋は、どうしても必要なイベント(2層の中間イベントと、3層の最終イベントは隠し扉の向こうにある)を除けば、【手がかり】がないと発見できないものとします。通路イベントは完全になくして、再入場はイベントによってはあり、としておきましょう。例えば、ここの兵士の野営地ですが……』
ダルタニア「ここには何度も来れると?」
リバT『実は、ここのイベントの一つに、【火吹き獣】という騎乗生物を金貨20枚で売ってくれるというものがありまして……』
ダルタニア「金貨20枚か。作りたてのキャラならともかく、今のあたしなら難なく買える値段だね。買った」
リバT『ところが、この騎乗生物は従者としても扱うので、連れて行くには従者点を1点必要とします』
アートス「太刀持ちかランタン持ちを首にすれば買えるが、ストーリー的には理不尽だな」
ターコイズ「理不尽でごわす」
アートス「何だかんだ言って、太刀持ちもランタン持ちも有用だから従者にしたんだ。具体的には、太刀持ちがいるからオレは弓と両手剣をラウンドのロスなく持ち替えできるんだし、ダルタニアだってランタン持ちがいるから盾を装備できるようになった。どちらもいないと困る」
アートス「重要と思わなければ、わざわざ経験点を2点消費して雇おうとは思わん。そこに触手マニアなプレイヤーが湧いてきて、NPCに変な個性を付けることは想定外だったが」
ターコイズ「まあ、そう言うな。キャラ立ちさせて、ストーリーを面白くしてやろうという心意気ではないか」
アートス「触手以外で心意気を示せよ」
ターコイズ「それはいささか無理難題でごわす」
アートス「無理難題かよ。お前のアイデンティティは触手だけか? 重力使いという能力はどうなったんだ?」
ターコイズ「プレイヤーの能力を、キャラに反映してもいいでごわすか? ターコイズが実は重力使いのパワーファイターで、カニアーマーを装着しているという設定にしてもいいのか?」
リバT『ただの太刀持ち従者のNPCですから、そこまで設定を盛られても、ルール的に対応できません。せいぜい、触手好きというフレーバー要素だけに留めてもらわないと』
ダルタニア「よし、決めた」
リバT『何ですか、クイーン?』
ダルタニア「レベルを2つ上げて、従者点を1点増やせば、ここに来て【火吹き獣】を購入できるんだな」
リバT『ええ。なお、混沌都市ゴーブでも【火吹き獣】は購入可ですが、通常価格は金貨75枚になっています』
ダルタニア「迷宮内でイベント購入する方がお買い得ってことだね。とにかく、あたしのこの迷宮内での成長は【火吹き獣】のために費やすよ。2層分をクリアすれば、3層めに突入する際には【火吹き獣】を連れて行けるって計画だ」
アートス「自分の成長よりも、従者を増やせる方にハマったわけか」
ダルタニア「【火吹き獣】が結構強いデータみたいだからね。ラウンド始めに火を吹いてダメージを与えられるし、混沌の怪物には火に弱いものがいて、ダメージが倍の2点になるなんて、本作ではお勧め品じゃないか」
リバT『おそらくは、1人キャラでプレイする際の強力なサポーターなんでしょうね。1人プレイなら、最初から従者点を7点もらえますから』
アートス「ソロだと、お供をゾロゾロ引き連れて、従者の屍を乗り越えながらのサバイバルゲームになる感じなんだよな。従者の命は使い捨てというか」
リバT『2人プレイだと、従者は大勢雇えませんが、最大2点まで従者点を成長させることができて、自分のプレイスタイルに合わせたサポート役を付けることが可能。従者に愛着を感じるロールプレイもありでしょうね』
5つめのイベント
アートス「前作と違って、中間イベントがバトルじゃないのは意外だったが、そろそろ強敵が来るような気がする。(コロコロ)12……って、またお宝か? 技量ロールは2を振ったが、1じゃなければ成功なので、アイテムゲットだぜ」
リバT『今回、アートスさんが見つけたのは、ハチコロリという虫除け効果のある香木2個ですね』
アートス「ええと、オレはアイテムを5つまでしか持てないんだよな。ランタン、ニワトリをつないだロープ、導きの石弾5個セット、聖水で、そこにハチコロリ1個だ。もう1つはダルタニアに持ってもらおう」
ダルタニア「確か、所持品は生命点の数だけ持てるんだね。あたしは7つまで持てて、今あるのがランタンと安らぎのフルートだけだから、余裕があるのでハチコロリを1つもらおう」
リバT『なお、ハチコロリは名前のとおり、ハチを即死させるアイテム。一応、ハチ以外の虫にも通用するかもしれません』
ダルタニア「ハチや虫が後で出て来るってことだね」
リバT『出目次第ですが。あと、ここでアイテムの所持数制限の話をしておきましょう。ダンジョン探索ゲームで入手アイテムをいくつまで持てるかは、たまに重要になって来ます。本作では金貨と食料、それから普段使用の武器や防具は所持数制限に引っ掛からない仕様です』
アートス「普段使用じゃない特別な道具は、所持数制限に引っ掛かるわけだな。スリングストーンや弓の矢弾は引っ掛からないが、魔法の効果付きの導きの石弾は所持数制限に引っ掛かるという裁定だ」
リバT『厳密には、普段使ってない予備の武器なんかも所持数制限に引っ掛かるのかもしれませんが、その辺は太刀持ち従者が持っているという解釈で、気にしないことにしました』
アートス「いらない武器は処分するって手もあるが、戦利品以外は売れない(値段がつかない)という仕様だし、もしも武器を破損するイベントが出たらイヤだから、初期装備の武器は捨てずに持ってるという話だからな」
ダルタニア「さすがに鎧や盾はかさばるので予備は持てない、ということで。ところで、今のあたしたちにはランタン持ちがいるのだから、ランタンは彼女に預けておけばいいのではないか?」
アートス「ああ。持ち物制限がキツくなったら、そうするとしよう。だけど、オレも次の成長では生命点を上げて、打たれ強さと所持アイテム数を増やすといいと思った」
リバT『冒険中に、次はこの能力を伸ばしたいと思えると、成長が楽しくなりますね。では、次に参りましょう。6つめ以降は運が良ければ、最終イベントに突入です』
6つめのイベント
ダルタニア「10台が出れば、最終イベントなんだね。(コロコロ)35だから通常イベントだ」
リバT『魔法使いの書斎です』
ダルタニア「おお、お宝の匂いが」
リバT『難易度4の【器用ロール】をどうぞ』
アートス「難易度4だったら、器用点を消費する必要もないな。(コロコロ)6で無駄に大きい目を出したか。何が見つかった?」
リバT『水晶でできたチェスのコマが(コロコロ)2個です。1個につき、金貨8枚で売れます』
ダルタニア「ただの換金アイテムか? 魔法使いの書斎だから、もっと凄い魔法の秘密とか【手がかり】とかないのかい?」
リバT『どの階層でこのイベントに遭遇するかで、内容が変わります。1階だと安いチェスのコマですが、2階だと貴重な数学の研究論文(金貨30枚の価値)。3階だと貴重な異国魔法の巻物(LITとHUG)が入手できるはずでした』
ダルタニア「異国魔法か。あたしの使う魔術とは違う魔法体系だね。どんな効果なんだい?」
リバT『LITは電撃で、あなたの【氷槍】と同威力の属性違い版。HUGは相手を抱きしめることで、友好的にできます』
ダルタニア「あたしの持ってる【友情】と同じような効果なんだね。だったら、いらないや」
リバT『どっちにしても、入手できませんよ。ここは1階なので、あなた達が見つけたのはチェスのコマなんだから』
アートス「チェスのコマが変形して、ハドラー親衛騎団みたいになったりは?」
リバT『オリハルコンのコマじゃないので脆いですし、大魔王が禁呪をかけてくれるわけでもないので、ただの工芸品でしかありません』
ダルタニア「つまり、この部屋の主の魔法使いはただのゲーマー趣味人ってことだね」
リバT『本当はもっと凄いお宝があったのかもしれないけど、盗掘者に荒らされて、チェスのコマ2つしか目ぼしいものが残っていなかったということでしょうね。さすがに趣味人でも、チェスのコマが2つだけでは遊ぶこともできないでしょうから』
7つめのイベント
ターコイズ「次は吾輩が振るでごわす。触手よ、来たれ。(コロコロ)43」
リバT『トラップです。矢が2本飛んで来るので、アートスさんとダルタニアさんは難易度3の【器用ロール】を行って下さい』
アートス「1が出なければ、回避成功だ。うおっ、1」
ダルタニア「何をしてる……って、あたしも1だと?」
ターコイズ「仲がよろしくて結構なことでごわすな」
アートス「罠を発動させた当人が、悪びれずに言うな!」
これでアートスの残り生命点は7、ダルタニアの方は9。防具のボーナスもあるので、すぐに死ぬような数字ではない。
なお、矢の本数は1d3で決まるので、もしも3本の矢が飛んで来たら、ターコイズが餌食になってしまう可能性は十分にあった。矢の本数で5〜6が出て、技量点0のターコイズが回避で1〜2を出せば即死する。
つまり、9分の1の確率でターコイズ死亡となっていた可能性も。
あっ、その場合はニワトリが犠牲になっていたのか。
8つめのイベント
アートス「2分の1の確率で最終イベントだな。(コロコロ)26。よし、10の位が3以下だから、1層めの最終イベントが来たぜ」
リバT『では、ボスキャラの「ミイラの戦士長」が出現しました。ミイラの包帯が触手みたいなムチになって、あなた方を同族の世界に引きずり込もうとします』
ターコイズ「触手キター……って、包帯を触手扱いは、ちと無理があるのでは? ミイラの包帯だから乾いているのだろうし、触手の王道はヌトッとかベチョッとか、もっとこう、海洋生物らしい湿り気があって然るべき。お前の触手もどきな包帯は、邪道と見なした。こんな似非触手は殲滅あるべし。さあ、アートスさま、ダルタニアさま、あなた方の力で、この不埒者に真の触手が何なのか知らしめてやって下さい!」
アートス「どうして、お前が仕切ってるんだ! 言われなくてもやってやるけどよ。ええと、ミイラだからアンデッドなんだよな。アイテムの聖水は有効か?」
リバT『ええ。飛び道具として投げたら、2点ダメージを与えますよ。ちなみに、こいつのレベルは5なので目標値も5。生命点も5です』
ダルタニア「技術点と体力点がともに5のゴブリンみたいだね」
リバT『FFシリーズとはシステムが違うので、一緒にするのはどうかと思いますが、今のあなた方の敵ではないと思いますね。では、飛び道具判定をどうぞ』
アートス「くらえ、聖水。出目4なので、普通に命中だ」
リバT『2点ダメージを受けて、残り生命点は3点です』
ダルタニア「次はあたしの魔法なんだけど、ミイラの包帯って火で燃えやすいんだよね」
リバT『ええ、2倍のダメージを与えます。命中すれば、2点ですよ』
ダルタニア「【氷槍】も2点ダメージだから、どっちでもいっしょなんだね。だったら【炎球】で、魔術ロールは(コロコロ)出目6ってことはクリティカルだっけ?」
リバT「【炎球】の場合、敵を巻き込める数が増えますが、1体の敵へのダメージが増えるわけではありません。ダメージは2点のままです」
ダルタニア「ダメージが1点でも増えてくれたら撃退できたのに」
アートス「続いて、接近戦で切り込めば、こっちの勝ちだ。太刀持ち、オレの剣を」
ターコイズ「はい、どうぞ。触手ブレード、セットオン!」
アートス「勝手に人の武器を触手にしてんじゃねえ。(コロコロ)ほら、出目1でファンブルだ」
ターコイズ「まだまだですな」
アートス「お前が変なことを言うから、調子が狂ったんだ」
ダルタニア「仕方ない。もう一度、【炎球】だ。はい、5を出して命中。あっさり倒したよ」
ターコイズ「さすがはダルタニア様。ほら、アートス様も見習わないと」
アートス「こいつ……」
今回のエピローグ
リバT『では、1層めのボスを倒したところで、戦利品を差し上げましょう。1d+1で宝物表を振って下さい』
ダルタニア「とどめを刺した者の権利として、あたしが振るよ。(コロコロ)3かい。1を足して4だから……」
リバT『金貨6枚分の価値のアクセサリーですね』
ダルタニア「安物を引いちまったようだ」
アートス「で、これで1層めは終わりか? 黒エルフの族長はどうなったんだ?」
リバT『ミイラの包帯に巻きつかれてパッケージ化されていました。あなた方は衰弱した族長さんを発見して、包帯から解放することに成功しました。このまま放置していたら、族長もミイラの仲間入りをしたのは間違いありません。族長は弱った体ながら、あなた達に支えられながら迷宮を出て、仲間の元に何とか帰還することに成功。あなた方は黒エルフの信頼を勝ち得ます』
ダルタニア「報酬はないのかい?」
リバT『金銭的な報酬はありませんが、情報をくれます。部族の歓待を受けていたあなた達ですが、数日の療養を経て体調を回復したスネージ族長が、混沌迷宮について彼の知っている話を聞かせてくれました』
アートス「どんな話だ?」
リバT『まず、1層めのマップですね。隠し部屋の情報も得たので、ランダム宝物表を2回と、宝部屋(部屋番号10台)を1回まで振れることにしましょう。今、振って下さい』
これによって、金貨30枚分の価値の宝石、金貨24枚分の価値のアクセサリー、そして重要アイテムの「黄金の鍵」を入手した一行。
アートス「黄金の鍵? 何に使うんだ?」
リバT『時が来れば分かる。迷宮の奥で必要になるはずなので、大事に持っておくように、と族長は予言するように語ります。具体的なことは言ってくれませんが、彼も予感めいたことしか知らないようですね』
ダルタニア「あたしたちには分からない超感覚が、エルフには備わっているって理解でいいよね」
アートス「とにかく、重要なキーアイテムだということだな。大事に持っていれば、それを使う局面で、GMのリバTが教えてくれるって思っておこう」
リバT『実のところ、それを使う場面が2ヶ所あるのですが、ランダムでイベントを決めていますので、必ず遭遇するとは限らないわけですね。次に、族長は恐ろしいカオスマスターの話をしてくれます』
ダルタニア「そいつが、この迷宮のラスボスってことでいいのかい?」
リバT『はい、ぶっちゃけそうです。カオスマスターは、凝縮された混沌の塊が歪んだ知性を持って、【呪術】と呼ばれる闇の魔術を扱えるようになった存在。その【呪術】に抵抗できなければ、混沌に苛まれて下僕に堕してしまうとか』
ターコイズ「そのカオスマスターに触手は生えているのでごわすか?」
リバT『その姿は不定形なので、ぶよぶよした肉塊に目玉や牙持つ口、歪んだ四肢やキチン質の節足、そして触手なんかも生えているという伝承が残っています。かつて勇敢な冒険者に撃退された後、長らく封じ込められていたのが、また復活したものと思われますね。黒エルフの族長は、敵対するオークの族長に危険を伝えて、一時的に和解して事に対処しようと提案したのですが、長年の確執とオーク特有の慢心のために、「カオスマスターなど敵ではない。このオレサマが粉砕してくれるわ」と迷宮の2層めに勇んで乗り込んで行ったそうです』
アートス「黒エルフの族長は、オークと和解しようと言うのか。つまり、敵の族長を助けるために2層めに降りて行け、と?」
スネージ族長(リバT)『連中にそんな義理はないが、うかつにも連中がカオスに取り込まれてしまうと厄介だからな。そうなる前に、共通の敵に対処する方が賢明だと訴えたのだが、我らの言うことは臆病者の戯言と一笑に付された。エルフとオークは互いに忌み嫌っているから、他の種族の者の仲介がなければ、話がまとまる見込みがない。力ある人間の冒険者の言うことなら、連中にも道理を説くことができるかもしれない』
アートス「つまり、敵を倒すのではなくて、オレたちに仲介役を頼もうって話だな」
スネージ族長『しょせんは一時的な同盟でしかないにせよ、共通の強大な敵が復活したと言うときに、互いにいがみ合っているのは愚か者だからな』
ダルタニア「呉越同舟ってことだね。このアランツァ世界では、どう言うのか知らないけど、似たような言い回しはあると思う」
アートス「相手が聞き耳を持たないときはどうするんだ?」
スネージ族長『殴って力を示して、無理やりにでも言うことを聞かせる。これがオークのやり方らしい。野蛮な連中だからな。言葉で解決するということを知らん』
ダルタニア「では、相手の族長に『こっちの話を聞け。聞かないなら打ち負かす。負けた者は勝った者のいうことを聞け』と連中の流儀でぶちかませばいい、と」
スネージ族長『我々エルフには、野蛮すぎて言えないセリフだ』
アートス「だったら、エルフはどう言うんだよ?」
スネージ族長『こっちの話を聞け。何? おとなしく話を聞くほどの理性もないのか? これだから野蛮人は……フーッ、仕方ない。そちらの言い分を先に聞いてやるぞ。我らは冷静な種族だからな。まともな交渉のできる相手なら、話に乗ってやらなくもない。さあ、何を提案する? (しばし聞いてから)フッ、バカバカしい。貴様の言うことには道理のかけらもない。こんな連中の相手をしようと思っていた、自分の愚かさが嘆かわしい。交渉決裂だ、速やかに死ねッ……と言ったところか。どうだ、冷静で合理的な交渉術だろう?』
ダルタニア「慇懃無礼という言葉そのものだね。そりゃあ、交渉にならないさ。交渉の席に着くなら、こちらが相手を対等の立場で考えていることを示さないと。上から目線にも程がある」
スネージ族長『元より、我らはオークと対等の立場に下りるつもりなどないよ。連中が理性をもって、我らの高みに昇って来るべきだ。それで状況が丸く収まるのならば、そうすべきではないかね?』
アートス「やれやれ。エルフとオークの交渉を上手くまとめようとする方が、カオスな気がするのはオレだけか?」
ダルタニア「結局、オークを殴って、言うことを聞かせた方が早いようだね」
(当記事 完)